【専門コンサルが分析】ものづくり補助金 19次公募の採択結果から見えた傾向と次回対策

ものづくり補助金19次公募の全国採択率は31.8%でした。

18次に続き、全国平均は30%前後で推移しており、以前のような“50%前後の高採択率”とは状況が大きく変わっています。

本記事では、当社の採択事例や他支援機関様との情報共有をもとに、19次の採択率の分析、地域別の傾向、様式変更の影響、採択されやすい事業計画の特徴を整理しています。

より詳しいご相談や、事業計画の方向性を確認されたい方は、無料相談をご利用ください。

この記事を読めばわかること
  • ものづくり補助金19次公募の採択率と、直近5回の採択率推移
  • 都道府県別の採択率と地域ごとの特徴
  • 認定支援機関の採択率が低下した背景(様式変更の影響)
  • 採択されやすい事業内容や導入機器構成の傾向
  • 今後も全国平均が30%前後で推移すると予想

本記事を監修する専門家

多田 舞樹
東京大学 教養学部卒業。
PwC Advisory合同会社を経て、2018年に補助金コンサルティングや事業承継支援を手がける株式会社HighAdoptionを設立。これまでに500件を超える補助金の採択実績を持つ。

テスト
目次

「ものづくり補助金」直近5回の採択率を比較(15次〜19次)

次(採択発表日採択率採択数申請数
15次(R5/9/29)50.3%2,8615,694
16(R6/1/19)48.8%2,7385,608
17(R6/5/20)29.4%185629
18(R6/6/25)35.8%2,0705,777
19(R7/7/28)31.8%1,6985,336
※参照元:採択結果(ものづくり補助金総合サイト)

直近2回の公募(18次・19次)は、16次公募以前と比べ、全国採択率が低下

  • 16次公募以前…採択率約50%(採択数/申請数:2,500/5,000件)
  • 18次公募以降…採択率約30%(採択数/申請数:1,500/5,000件)

新たに補正予算が組まれて今年度1回目のものづくり補助金にて全国採択率が30%であったことを踏まえると、今後も全国平均は30%前後が続くことが想定されます。

※17次の申請数について…対象枠が「省力化(オーダーメイド)枠」のみで、次回(第18次)公募のスケジュールと重なっていたなどの理由から申請数が極端に少なかったのでしょう。

ものづくり補助金19次公募の都道府県別採択率とエリア別傾向

東京都の採択率は31%。

大阪府は18・19次公募ともに推定20%であり、他地域と比べ採択率が低い傾向です。

関西地方全体の推定採択率も20%(滋賀県30%、京都府26%、大阪府13%、兵庫県20%、奈良県45%、和歌山県21%)と、全国採択率より顕著に低い傾向にあります。

他エリアの採択率はおおむね全国採択率30%です。

※こちらは今回に限った傾向であり、今後も継続される傾向であるとは考えておりません。

採択率トップ3

  1. 60%:山口県
  2. 56%:三重県
  3. 52%:茨城県:熊本県
  4. 50%:鳥取県、大分県
  5. 47%:栃木県、福井県、島根県

採択率ワースト3

  1. 13%:大阪府
  2. 17%:長崎県
  3. 18%:岩手県
  4. 19%:群馬県、岡山県
  5. 21%:和歌山県

ものづくり補助金19次公募 補助金採択者の認定支援機関使用率と認定支援機関の採択率

採択者の認定支援機関使用率は64.8%

弊社では、他支援機関とも情報連携を行っておりますが、19次公募においては軒並み40~50%程度へと低下している状況です。

弊社の場合、採択率低下の理由としては採択件数そのものの減少です。

また、直近公募では事業計画書の仕様変更が行われ、内容の整理や論理構成がより重要になりました。

全国的に見ると、採択率の低下と認定支援機関の利用率の高さから、「認定支援機関を利用しない申請は、以前よりも相対的に不利になりやすい」状況が生まれているとも言えるかもしれません。

※あくまでも傾向となります

事業計画書 様式変更の主な変更点

  1. 提出形式の変更
    Word/ExcelまたはPDF形式の事業計画書を作成・提出→電子申請システムへの直接入力形式
  2. 審査項目・評価観点の変更
    「技術面」「事業化面」など→「経営力」「事業性」「実現可能性」等の観点が明確化
  3. 様式設計の標準化/枠の統合
    事業計画書の様式が共通化・定型化され、各事業者が独自にレイアウトや自由度を高く使える余地が減った

ものづくり補助金19次公募 採択事例の傾向

  • 本年度よりものづくり補助金は「新サービス」の提案を重視
  • 採択されやすい導入機器も上記トレンドに準拠

弊社採択事例の傾向となります。

本年度よりものづくり補助金は「新サービス」の提案を重視

事業者が既に提供しているサービスの発展が目的ではなく、従来のサービスとは異なる新サービスのための導入が補助金支給の対象となりました。

採択されやすい導入機器も上記トレンドに準拠

汎用性の高い機器や既に使用している機器の最新型等ではなく、従来その事業者が使用していない機器の導入が良いと考えます。

新サービス提供のため一貫性のある機器導入が重要。

今後、ものづくり補助金の採択率向上に効果的だと考える要素2つ

弊社の事例から考えています。

※金融機関の借り入れはネガティブな影響はないと考えます。

賃上げ要件

賃上げ要件は必須ではありませんが、実際に加点ありの事業の方が採択率が高くなっています。

加点項目を積極的に活用することも、採択率を高めるための重要な戦略であると言えるでしょう。

導入機器が2個以下

一見、「導入機器が多い方が事業規模が大きく、評価されそう」と考えがちですが、審査では「事業目的と整合しているか」「投資効果が明確か」が重視されます。

機器が多い=分散していて焦点がぼやける、もしくは「本当に必要なのか?」と疑念を持たれる可能性があります。

そのため、導入機器は「必要最小限」に絞り込み、各機器がどのように事業課題を解決し、生産性向上に直結するのかを明確に示すことが、採択率を高める上で非常に効果的です。

導入機器が多くてもシナジーが強ければ採択確率は高いと考えます。

まとめ

ものづくり補助金19次公募の採択率は31.8%で、直近の公募と同様に全国平均は30%前後で推移しています。

地域によって差はあるものの、今回だけの一時的な動きとみられ、長期的な傾向とは言えません。

今後の申請では、賃上げ要件の活用や導入機器の最適化など、より戦略的な計画づくりが重要になります。

これまでのように、8割以上の事業者様が「1回の申請で採択される」状況ではなくなってきており、複数回の挑戦も前提とした準備が必要なフェーズに入っていると言えます。

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この記事を書いた人

補助金申請支援を専門とする会社にて勤務。
ものづくり補助金や事業再構築補助金において、交付申請・実績報告・事業化状況報告など、採択後の手続きを中心に多数の企業支援を担当。

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