実務支援者が解説!2025年ものづくり補助金「情報通信業」採択事例と結果から見る共通点

2025年も「ものづくり補助金」は、情報通信業における革新的な製品開発や生産プロセスの改善を後押しする制度として、多くの中小企業に活用されています。

採択を勝ち取るには、開発する製品・サービスの革新性、実現可能性など、審査基準を意識した計画づくりが不可欠です。

本記事では、2025年の第19~21次公募における情報通信業の採択事例を紹介しながら、実際に採択された事業の特徴を解説します。

これから「ものづくり補助金」の申請を検討されている情報通信業の方は、ぜひ本記事の事例を参考に、自社に合った申請戦略を考えるヒントにしてください。

この記事を読めばわかること
  • ものづくり補助金19〜21次公募(2025年)情報通信業の採択事例
  • 採択された事業計画に共通する4つの特徴

本記事を監修する専門家

池上 翔大
補助金申請支援を行う会社で補助金事業部統括マネージャーを勤める。
年間100件以上の事業者に対し、補助金の採択へ導いている。

テスト
目次

【2025年】情報通信業のものづくり補助金の採択事例(19〜21次)

採択実績の多い都道府県の中から、情報通信業において他の企業にも参考となるような採択事例のうち、とくに実現可能性が読み取りやすいものを選定し、ご紹介しております。

分野や規模が異なるため必ずしも“共通パターン”とは言い切れません。

しかし、内容を比較すると、採択に至った可能性を示すいくつかの特徴や傾向が読み取れます。

※本記事の事例は、申請件数が多い地域(例:東京都)の採択企業の中から、特定の業種・企業に偏らないように選定したものです。

あくまで一般的な傾向を把握するための“参考事例”としてご覧ください。

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事例①科学技術計算ソフトウェア(シングルフィジックス)の作成

事業者名株式会社オメガソリューションズ
所在地東京都江東区
会社HPhttps://www.omega-solutions.co.jp/

国内外でリユース物流と販売チャネルを構築し、「不要」を「必要」に変える流通事業を展開する企業。

ものづくり補助金を活用し、海外リユース流通基盤の強化および物流・処理設備の製造体制構築に挑戦します。

事例②革新的SES支援システムで業務効率化とエンジニア不足解消

事業者名株式会社バイモソフト
所在地東京都港区
会社HPhttps://www.baimosoft.co.jp/corporate/

業務システム開発、アプリケーション開発、SES 支援等を手がけ、企業のIT課題解決を支援するソフトウェア開発企業。

ものづくり補助金を活用し、エンジニアの稼働管理や案件マッチングを効率化するSES支援システムの開発・提供体制強化に挑戦します。

事例③ビル関連アプリの認証ゲートシステム提供による新規事業展開

事業者名株式会社インフレーム
所在地東京都港区
会社HPhttps://www.inframe.jp/company.html

広告・Web制作からシステム開発、キャラクターライセンスを活用したインテリアフレームの企画・製造販売まで手がけるデジタルコンテンツ&製造併設企業。

ものづくり補助金を活用し、キャラクターライセンスを活用したインテリア製品の製造・流通体制強化に挑戦します。

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事例①AIを活用したシステムテスト自動化ツールの開発

事業者名CDXテクノロジー株式会社
所在地東京都中央区
会社HPhttps://www.cdxt.co.jp/

製造業向けを含む多業種のDX・データ利活用ソリューションを提供するITサービス企業。

ものづくり補助金を活用し、AI/テスト自動化ツールの開発を通じて製造プロセスの効率化・品質向上に挑戦します。

事例②AI搭載WebマニュアルCMSの開発事業

事業者名株式会社スフィアリンクス
所在地東京都中野区
会社HPhttps://sphere-links.co.jp/

多業種向けにWebサイト・システム・マーケティング支援を行うITソリューション企業。

ものづくり補助金を活用し、AI/CMSを活用したWebマニュアルCMSの開発および顧客企業への展開体制強化に挑戦します。

事例③採用活動の面接調整と書類選考を自動化する採用管理SaaS事業

事業者名株式会社YOAKE
所在地東京都港区
会社HPhttps://yoake.one/

デジタルマーケティング支援、Webサイト・システム構築、採用支援を幅広く手がけるITソリューション企業。

ものづくり補助金を活用し、採用管理・書類選考の自動化SaaSの開発と提供体制の強化に挑戦します。

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発表後に更新予定

採択された情報通信業の事業計画に見られる共通点

今回取り上げた情報通信業の採択事例は6件と多くはありませんが、計画内容を比較すると、評価された可能性が高いポイントがいくつか見えてきます。

「課題が明確で、改善効果が具体的」なITツール開発が中心

  • 科学技術計算ソフト(オメガソリューションズ)
  • SES支援システム(バイモソフト)
  • 認証ゲート新規事業(インフレーム)
  • テスト自動化(CDXテクノロジー)
  • WebマニュアルCMS(スフィアリンクス)
  • 採用管理SaaS(YOAKE)

など、いずれの計画も“どの工程の何が非効率で、ITでどう生産性を改善するのか”が具体的です。

抽象的になりやすいIT分野において、課題 → 技術 → 効果 の因果関係が明確であることは、審査において大きな強みになったと推測できます。

SaaS・AI・DXなど「社会的ニーズが高い領域」が多い

6件の多くが、

  • AI活用
  • 自動化
  • SaaS
  • 業務効率化

といった、国のDX推進政策と合致するテーマです。

情報通信業は領域が広いため、社会的に需要が高い分野を選ぶことで、市場性・将来性を説明しやすい点が採択につながった可能性があります。

既存の顧客基盤・開発ノウハウが計画の説得力を高めている

例えば、

  • システム開発企業が自社SaaSに拡張
  • Web制作・マーケ支援企業がCMSを開発
  • エンジニア派遣企業がSES支援システムを内製化
    など

既存事業との親和性が高い計画が多い点が特徴です。

「まったく新しい事業」ではなく、自社の技術力等を活かして新製品・新サービスを開発する計画は、実現可能性の面で評価されやすいと考えられます。

品開発だけでなく“提供体制の強化”まで含めた計画が多い

単にソフトを作るだけでなく、

  • 提供体制の整備
  • 事業展開の仕組み
  • 販路・営業体制の構築

まで含めた計画が見られます。

ITツールは「作れるか」よりいかに「顧客等に新たな価値を提供する」が重要であるため、事業化の仕組みまで書かれている計画は採択されやすい傾向があると推測されます。

情報通信業の採択事例を参考に、自社でもものづくり補助金の申請を前向きに検討しよう

今回紹介した6件の事例は、それぞれの技術領域やサービス内容こそ異なりますが、全体を比較すると、情報通信業の補助金申請において評価されやすい共通点が見えてきます。

  • 課題 → 技術 → 効果 の因果関係が明確に示されている
  • AI・SaaSなど社会的ニーズの高い領域に取り組んでいる
  • 既存事業との親和性が高く、実現可能性が高い
  • 開発だけでなく、提供・展開体制まで設計されている

情報通信業の申請では、技術内容が抽象化しやすい分、「誰の・どんな課題を・どの技術で・どう改善するのか」を明確に記述することが成功のカギになります。

本記事の事例を参考に、自社の強みや課題を整理しながら、採択につながる申請戦略をぜひ検討してみてください。

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この記事を書いた人

東京大学大学院 工学系研究科に所属。
ものづくり補助金、東京・千葉の設備投資向け補助金など支援実績多数。これまでに支援した企業の累計採択額は1.5億円を超え、採択率95%という高い成果を上げている。

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