ものづくり補助金の「給与支給総額」を確実に上げる方法|対象範囲・失敗例・達成計画まで専門家が解説
ものづくり補助金の中でも、もっとも誤解が多く、返還リスクが高いのが「給与支給総額+2%」の要件ではないでしょうか。
「どこまでが給与支給総額に含まれるのか?」
「賞与や役員報酬はどう扱う?」
「新規採用で増加させてもいい?」
こうした判断を誤ると、補助金を受給したあとに“未達成”となり、返還を求められるケースもあります。
この記事では、支援者視点で給与支給総額の正しい上げ方・失敗例・達成しやすい計画の作り方を整理します。
本記事は19次以降の考え方で、例として年率2%時増加させるよう考えております。
- 給与支給総額+2%要件の正しい考え方
- 給与支給総額に含まれる項目と計算方法
- 実務で使われる賃上げ手段と注意点
- 未達成・返還リスクを避けるための計画の立て方
本記事を監修する専門家

多田 舞樹
東京大学 教養学部卒業。
PwC Advisory合同会社を経て、2018年に補助金コンサルティングや事業承継支援を手がける株式会社HighAdoptionを設立。これまでに500件を超える補助金の採択実績を持つ。
給与支給総額+2%要件の正しい理解
ものづくり補助金の要件の中でも、「給与支給総額+2%」は最も誤解が多く、返還リスクが高い項目です。
この要件は、「感覚的に賃上げすればOK」というものではなく、計算方法・対象範囲・事業年度を正確に理解していないと達成できません。
給与支給総額に含まれる項目/含まれない項目(ものづくり補助金の定義)
給与支給総額には、原則として次のような支給額が含まれます。
- 従業員の給与支給総額:給料手当+賞与+雑給
- 役員の給与支給総額:役員報酬+役員賞与
一方で、対象外と誤解されやすい項目もあるため、公募要領に基づいた正確な区分を前提に計算する必要があります。
「含まれる/含まれない」を曖昧にしたまま計画を立てると、達成しているつもりでも未達と判定されるリスクがあります。
どの年度が基準?いつまでに+2%増加が必要か
基準年度は「補助金の額の確定に至った日を含む事業年度の1期前の事業年度」で、その年の給与支給総額が基準値となります。
増加確認は事業計画年度(3〜5年)が経過した年の事業化状況報告(事業計画年度が3年なら、基準年度の3年後の決算書を提出する事業化状況報告)に実施されます。
そのため、厳密には毎年2%増加させる必要はなく、3年後に複利2%増加(約6.12%)増加していれば良いということになります。
事業年度によるズレ(決算月による影響)
給与支給総額は「月単位」ではなく、事業年度単位で判断されます。
そのため、
- 補助事業の開始・終了時期
- 賞与の支給タイミング
- 決算月
によって、想定していた増加分が別年度にズレてしまうことがあります。
実務では、決算月を起点に逆算して計画を立てることが不可欠です。
達成できなかった場合のリスク(返還の可能性)
給与支給総額+2%要件を達成できなかった場合、補助金の返還を求められる可能性があります。
これは一部減額ではなく、要件未達として扱われる点が重要です。
そのため、この要件については「達成できたらラッキー」ではなく、確実に達成できる計画を立てることが前提になります。
給与支給総額を上げる方法(実務で最も使われる2つの手段)
実務上、使われる手段は大きく2つです。
①基本給の調整で達成する
最も確実なのが、基本給の引き上げです。
- 事業年度を通じて安定して反映される
- 期ズレのリスクが少ない
という点で、達成確度が最も高い方法と言えます。
②賞与で調整する場合の注意点(支払時期の期ズレリスク)
賞与で調整する方法もありますが、
- 支給日が事業年度をまたぐ
- 想定どおり支給できない
といった期ズレリスクがつきまといます。
賞与を使う場合は、支給日ベースでどの年度に算入されるかを必ず確認する必要があります。
よくある失敗例と注意点
賞与で調整しようとして期ズレが起きる
「賞与で一気に調整しよう」と考えた結果、支給日が年度外となり未達になるケースは非常に多いです。
役員報酬を除外して計算してしまう
役員報酬が含まれることを知らず、給与支給総額を少なく見積もってしまう例もあります。
新規採用が計画どおりに進まず未達成
採用計画は不確定要素が多く、実績ベースで見ると計画どおりに進まないことも少なくありません。
事業年度の区切りを間違える(最も多い)
最も多いのが、「どの年度で判定されるか」を誤るケースです。
ここを間違えると、他が正しくても未達になります。
給与支給総額の達成計画の作り方(支援者視点)
- 前年の“実績額”から逆算して必要額を算定する
- 基本給・賞与・採用計画のバランスを見る
- 賞与頼みは危険。固定費とのバランスをチェック
- 事業年度ごとの“支払いタイミング”を考慮する
まとめ:給与支給総額の上げ方は“計画の精度”で決まる
給与支給総額+2%要件は、理解不足による未達成が最も多い項目です。
押さえるべきポイントは次の4つです。
- どこまでが給与支給総額に含まれるかを正確に把握する
- 事業年度と支払い時期を間違えない
- 基本給・賞与・採用をどう組み合わせるか事前に決める
- 前年実績から逆算して達成計画を立てる
これらを整理すれば、返還リスクを避けながら、無理のない賃上げ計画を作ることができます。
