【新事業進出補助金】採択後の流れと注意点を補助金事業部マネージャーが解説

新事業進出補助金は「採択されて終わり」ではありません。
採択後には、交付申請から事業実施、実績報告、補助金入金までの一連の流れがあります。
本記事では、その手続きを順番に解説します。
- 新事業進出補助金の採択後に必要な手続きの全体像
- 交付申請・事業実施・実績報告・入金までの時系列の流れ
- 採択取消や減額を防ぐための注意点と実務上のポイント
- 証拠書類の管理方法やスケジュール遅延リスクへの対策
本記事を監修する専門家

多田 舞樹
東京大学 教養学部卒業。
PwC Advisory合同会社を経て、2018年に補助金コンサルティングや事業承継支援を手がける株式会社HighAdoptionを設立。これまでに500件を超える補助金の採択実績を持つ。
採択後の基本的な流れ

採択後に必要な手続きは、一見シンプルに見えて実務では多くの注意点があります。
特に交付申請から実績報告までの各段階では、見積取得や契約書の整備、写真記録や経費証憑の保管など、細かな作業が必須です。
これらを怠ると補助金が減額されたり、不交付となるリスクもあります。
交付申請から入金までの流れを時系列で整理し、実務上のポイントを解説します。
交付申請
採択通知を受けたら、最初に行うのが「交付申請」です。
ここでは、複数業者から取得した相見積や契約予定のカタログ、事業計画書などを添えて、補助金を実際に使えるようにするための申請を行います。
交付決定前に発注・支払いをしてしまうと補助対象外になるため、発注作業は必ず交付決定通知を受けてからにしましょう。
交付申請は採択発表から遅くとも2か月後の日までに行う必要があります。
期限までに申請がない場合は採択取消となります。なお、交付決定までに要する期間は案件ごとに異なり、公募要領に具体的な日数の明記はありません。
事業の実施
交付決定後は、計画に沿って事業を実施します。
設備導入や工事、システム構築などを行う際には、契約書や納品書、支払証明など、後の実績報告に必要な書類を必ず整えておきましょう。
また、設置状況の写真記録や稼働確認資料も求められるため、現場責任者と連携して記録漏れを防ぐことが重要です。
補助事業の実施期間は交付決定日から14か月以内(ただし採択発表日から16か月後まで)です。
延長は原則認められませんが、天災など申請者の責によらない事由がある場合は延長が認められる場合があります。
早めに発注・設置の段取りを組み、計画的に進めることが補助金受給の鍵となります。
※参照元:1-4. 補助事業の実施期 応募申請ガイド 新事業進出補助金
実績報告
事業完了後は「実績報告」を行います。
ここでは、交付申請時に提示した計画どおりに事業を実施したかを証明するため、請求書や振込明細、通帳コピー、設置写真など多数の証憑を提出します。
実績報告書は、事業完了日から30日以内または完了期限日までのいずれか早い日までに提出する必要があります。遅延すると交付決定取消の対象となります。
また、実績報告が不十分だと補助金の減額や不交付につながるため、証拠書類の抜け漏れを徹底的に防ぐ必要があります。
経理担当者と連携し、経費処理の段階から領収書や契約書を整理しておくと報告作業がスムーズになります。
補助金の精算・入金
実績報告が受理されると、事務局による確認・検査を経て補助金が支払われます。
実績報告後、確定検査→交付額の確定→補助金の請求→補助金の支払の順に進みます。
所要期間は案件ごとに異なり、公募要領に一律の所要日数は明記されていません。
Q1 補助金の支払いはいつ頃か。
A 補助事業の完了後、30日以内または補助事業実施期間の終了日までに実績報告書やその証憑となる書類等を提出し、補助事業の確定検査を受けます。補助金確定通知書を受領した後、精算払いの請求を行い、事務局から補助金が振り込まれます。
例えば、経費処理の不備や証憑不足があると補助対象外となり、減額されることがあります。
また、補助金は一括で振り込まれるため、事業者は自己資金で一時的に立替える必要がある点も理解しておきましょう。
資金繰りの見通しを事前に立てておくことが大切です。
採択後に注意すべきポイント
採択後の工程では、スケジュール管理や証拠書類の保管方法に注意を怠ると、補助金の減額や不交付といったリスクが生じます。
特に中小企業の場合、現場の多忙さから記録漏れや手続き遅延が起こりやすく、後になって修正できないケースも少なくありません。
補助金を確実に受け取るためには、経理・現場・経営者が一体となって体制を整えることが求められます。
スケジュール遅延によるリスクと対策
補助事業の実施期限を守れない場合、補助対象外経費が発生したり、補助金そのものが減額されるリスクがあります。
遅延の主な原因は、発注の遅れ、工事や設備導入の停滞、書類準備の不足です。
これを防ぐには、交付決定後すぐに業者とスケジュールを調整し、余裕を持った計画を立てることが重要。
また、定期的に進捗を確認し、遅延の兆しがあれば早めに事務局へ相談することで、柔軟な対応を得られる可能性もあります。
経費の記録方法と証拠書類のチェックリスト
補助金事業では、すべての経費について証憑を揃えることが必須です。
見積書、注文書、請求書、領収書、振込明細、通帳コピーなどを「紐づけて」整理し、後から見ても一連の流れが追えるようにしておく必要があります。
さらに、設置状況の写真や作業記録も実績報告の必須資料です。
チェックリストを事前に作成し、経理担当と現場責任者が協力して書類を管理することで、報告時の抜け漏れを防ぎ、スムーズな精算につながります。
説明会の参加義務
新事業進出補助金では、採択後に事務局が実施する説明会への参加が義務付けられています。
これは公募前の制度説明会(任意参加)とは異なり、参加しないと採択が無効となる点に注意が必要です。
採択後の説明会はオンライン形式で行われ、交付申請や実績報告の方法が解説されます。
参加者は申請責任者が望ましいですが、代理参加の可否は事務局に確認しておくと安心でしょう。
(説明会への参加義務)
⚫本補助金に補助金交付候補者として採択された事業者は、事務局が実施する説明会に参加しなければなりません。参加しない場合は、説明会最終開催日をもって、自動的に採択は無効となります。
まとめ|採択後の流れまでしっかり理解したうえで進めることが重要
新事業進出補助金は、採択がゴールではなくスタート。
交付申請から事業実施、実績報告、補助金入金までの流れを正しく理解し、計画的に対応することが不可欠です。
特に、交付決定前の発注や証憑不足は大きなリスクにつながります。
採択後の工程を事前に把握し、社内体制を整えることで、補助金を確実に受け取り、事業を成功に導くことができます。