【虚偽は採択取消】ものづくり補助金”事業化状況報告”の書き方と注意点

ものづくり補助金では、採択後、原則5年間にわたり毎年「事業化状況報告」を提出する必要があります。

内容自体は難解ではありませんが、売上や付加価値額などの数値を継続して管理し、根拠とともに正確に示すこと が求められます。

多くの項目では、目標未達そのものが直ちに問題になることはありません。

ただし、「給与支給総額」や「事業所内最低賃金」については、未達の場合は補助金の全部または一部の返還が求められます。

また、虚偽の記載や報告の未提出が続いた場合には、採択取り消しの対象となることもあります。

この記事では、事業化状況報告で必要となる書類や数値の全体像を整理し、誤解しやすいポイントや、実務上とくに注意すべき点をわかりやすく解説します。

この記事を読めばわかること
  • ものづくり補助金における事業化状況報告の目的と報告期間
  • 毎年提出が必要な書類・数値の全体像
  • 目標未達でも問題にならないケースと、返還リスクが生じるケースの違い
  • 採択取消につながる虚偽記載・未提出の具体的な注意点
  • 事業化状況報告を実務で無理なく進めるための基本的な考え方

本記事を監修する専門家

多田 舞樹
東京大学 教養学部卒業。
PwC Advisory合同会社を経て、2018年に補助金コンサルティングや事業承継支援を手がける株式会社HighAdoptionを設立。これまでに500件を超える補助金の採択実績を持つ。

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目次

事業化状況報告とは何か(5年間計6回)

ものづくり補助金では、補助事業が完了したあとも原則5年間、毎年「事業化状況報告」を提出する義務があります。

この報告は、

「計画どおりに事業が進んでいるか」
「補助金によってどのような成果が出ているか」

を確認するためのものです。

内容自体は難解ではありませんが、売上や付加価値額、給与支給総額など数値を毎年継続して整理する必要があるため、軽視すると後から負担が大きくなりやすい工程でもあります。

事業化状況報告の目的と期間

事業化状況報告の目的は、補助金が一時的な支援で終わらず、中長期的な事業成果につながっているかを確認することです。

報告期間は、補助事業完了後から原則5年間。

年度ごとに1回、決められた期限までに提出します。

「一度出せば終わり」ではなく、毎年続く義務である点を理解しておく必要があります。

毎年求められる主な報告内容

毎年の事業化状況報告では、以下のような内容が求められます。

  • 補助事業に関連する売上
  • 付加価値額の実績
  • 従業員数や賃金の状況
  • 事業の進捗や成果の概要

いずれも「計画との比較」が前提になるため、数値の根拠を整理しておくことが重要です。

提出が必要な項目と数値(まず全体像)

事業化状況報告で提出する内容は多岐にわたりますが、大きく分けると数値系・人件費関連・事業成果の3つに整理できます。

まずは全体像を把握しておくことで、「何を準備すべきか」が明確になります。

売上・付加価値額の実績と根拠資料

売上や付加価値額は、事業化状況報告の中心となる項目です。

数値は会計データをもとに算出し、決算書や試算表と整合していることが求められます。

感覚的な数字や概算は認められません。

従業員数・給与支給総額・事業場内最低賃金

人件費関連の項目も毎年報告対象になります。

特に、賃金や事業場内最低賃金については、未達の場合に返還義務が生じるケースがあるため、正確な記載が重要です。

事業成果(新商品の売上・波及効果)

補助事業によって生まれた成果を、簡潔に文章で説明する項目です。

長文は不要ですが、「どのような効果があったか」を数値と合わせて説明できると評価が安定します。

解しやすいポイント(未達でもペナルティなし)

事業化状況報告では、「どこまでが許容されるミスで、どこからが重大な問題なのか」が分かりにくく、不安や誤解が生じやすいポイントです。

計算ミスや記載漏れのように修正で対応できるケースもあれば、虚偽記載や未提出のように、採択取消につながる重大なケースもあります。

その違いを正しく理解しておくこと、未達の理由を正直かつ合理的に説明できているかです。

計算ミス・記載漏れの扱い(ミス等が軽微であれば補正で対応できる)

軽微な計算ミスや記載漏れについては、補正依頼で修正できるケースがほとんどです。

ただし、繰り返しミスがあると指摘が厳しくなるため、提出前の確認は欠かせません。

採択取り消しにつながるケース(虚偽・未提出)

事業化状況報告で最も注意すべきなのは、虚偽記載や未提出です。

この2点は、補助金返還につながる重大なリスクになります。

虚偽記載が取消対象になる理由

事実と異なる数値や内容を記載すると、制度の信頼性を損なう行為と判断されます。意図的でなくても、虚偽と受け取られる可能性があるため、不確かな情報は記載しないことが重要です。

未提出・放置が重大とみなされるケース

期限を過ぎても提出しない、事務局からの連絡を放置する、といった行為は重大な問題として扱われます。

不正が疑われる場合の対応

不正が疑われる場合、追加資料の提出や説明を求められることがあります。

この段階になると、企業側の負担は非常に大きくなります。

事業化状況報告の書き方(最低限おさえるポイント)

事業化状況報告は、「評価される文章を書く場」ではなく、実績を正確に・過不足なく記録するための報告書です。

そのため、表現を工夫したり、成果を誇張したりする必要はありません。

むしろ重要なのは、数値の根拠が明確で、会計データと矛盾がないこと。

そして、未達がある場合でも、その理由を事実ベースで説明できていることです。

ここでは、実務上つまずきやすいポイントを踏まえ、最低限おさえておくべき書き方の考え方を整理します。

実績ベースの数値を正確に書く

事業化状況報告では、計画時の目標ではなく実際に出た数値(実績)を記載します。

売上・付加価値額・従業員数などは、必ず決算書や試算表などの会計データをもとに算出します。

「だいたいこのくらい」という感覚値は認められません。

数字をよく見せようとして調整する必要はなく、そのままの実績を記載することが不可欠です。

会計データとの整合性を必ず確認する

事務局は、事業化状況報告の数値と、過去の実績報告・決算情報との整合性を確認します。

売上や付加価値額の計算方法がずれていると、補正依頼の対象になりやすく、説明に時間を取られる原因になります。

提出前に、「この数字はどの資料から算出したか」を自分で説明できる状態にしておくことが重要です。

まとめ:事業化状況報告は「正確な実績管理と要件遵守」が最も重要

事業化状況報告で求められているのは、計画どおりに成果を出しているかを評価されることではなく、毎年の実績を正確に整理し、根拠とともに報告し続けることです。

多くの項目では、売上や事業成果が未達であっても、理由を事実ベースで説明できていれば、直ちに問題となることはありません。

一方で、「給与支給総額」や「事業所内最低賃金」が未達の場合は、全部または一部の補助金の返還が求められる可能性があります。

また、虚偽の記載や報告の未提出は、制度の前提を損なう行為として、採択取消につながる重大なリスクとなります。

事業化状況報告は、難しい書類ではありませんが、数値管理を怠らず、要件を正しく理解したうえで、誠実に対応し続けることが不可欠です。

この点を押さえていれば、過度に恐れる必要はなく、実務として着実に対応していくことができます。

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この記事を書いた人

補助金申請支援を行う株式会社High Adoptionの補助金事業部統括マネージャー。
年間100件以上の事業者に対し、補助金の採択へ導いている。

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