ものづくり補助金の発注可能時期・納品可能時期を徹底解説|時期ミスで減額・不支給を防ぐ判断基準
ものづくり補助金で、最も多い不支給・減額理由が「発注や納品の時期の誤り」です。
事業内容や金額以前に、発注のタイミングを一日でも間違えただけで、該当経費が全額補助対象外になるケースも珍しくありません。
特に誤解されやすいのが、「採択されたら発注してよい」という認識です。
補助金では、発注できる起点・納品が認められる期限が制度上、明確に定められています。
この記事では、ものづくり補助金における 発注可能時期・納品可能時期の基本ルール を整理し、時期の誤りによる減額・不支給を防ぐための判断基準を解説します。
- ものづくり補助金で発注できる正しいタイミング
- 補助対象として認められる納品期限の考え方
- 発注・納品時期で起きやすい失敗例
- 時期の誤りによる減額・不支給を防ぐための判断基準
本記事を監修する専門家

多田 舞樹
東京大学 教養学部卒業。
PwC Advisory合同会社を経て、2018年に補助金コンサルティングや事業承継支援を手がける株式会社HighAdoptionを設立。これまでに500件を超える補助金の採択実績を持つ。
経費として認められる「発注可能時期」はいつから?
ものづくり補助金で、最も多い不支給・減額理由が「発注時期の誤り」です。
事業内容や金額以前に、発注のタイミングを間違えただけで、該当経費が全額補助対象外になるケースも珍しくありません。
重要なのは、「採択されたら発注してよい」わけではない点です。
補助金では、発注可能な起点が明確に定められており、それ以前の発注は原則として認められません。
ここでは、発注時期の基本ルールと、誤解されやすいポイントを整理します。
発注は“交付決定日以降”が原則
補助対象経費として認められる発注は、
原則として「交付決定日以降」に行われたものに限られます。
採択通知日ではなく、あくまで交付決定日が起点です。
交付決定前に行った発注・契約・注文は、その後に交付決定を受けていても、補助対象にはなりません。
この点を誤解し、「採択されたから大丈夫」と判断してしまうケースが非常に多く見られます。
交付決定前に発注すると全額対象外になる理由
交付決定前の発注が認められない理由は明確です。
補助金は、交付決定によって初めて“補助対象事業として承認される”制度であり、それ以前の行為は「補助金がなくても実施できた事業」と判断されます。
そのため、
- 見積取得
- 価格交渉
は問題ありませんが、
- 注文書の発行
- 契約締結
- 発注確定
に該当する行為は、交付決定前に行うと即アウトになります。
採択通知後〜交付決定前の“よくある誤解”
実務で特に多い誤解が、「採択通知後なら発注しても問題ない」という判断です。
採択通知はあくまで「審査に通過した」という通知であり、補助対象経費としての承認ではありません。
採択通知後〜交付決定前は、最もトラブルが起きやすい期間です。
この期間は絶対に発注しないことが重要です。
事前着手の例外が認められるケース(稀)
制度上、事前着手が認められる例外規定は存在します。
ただし、これは極めて限定的であり、
- やむを得ない事情がある
- 事前に正式な承認を受けている
といった、厳しい条件を満たす必要があります。
「例外がある=申請すれば通る可能性がある」という理解は誤りです。
原則は不可、例外はほぼ使えないと考えるのが現実的です。
経費として認められる「納品可能時期」はいつまで?
発注と同様に重要なのが、納品のタイミングです。
発注が正しくても、納品時期を誤ると補助対象外になります。
補助金では、補助事業実施期間内に「納品・検収・支払い」まで完了していることが求められます。
事業実施期間内に納品・検収・支払いまで完了している必要
納品だけでなく、
- 検収
- 支払い
まで含めて、事業実施期間内に完了していることが条件です。
「納品は間に合ったが、支払いが翌月になった」というケースでは、補助対象外と判断される可能性があります。
納品遅れで対象外になる典型例
実務で多いのが、
- メーカー都合による納期遅延
- 工事・設置が期間内に終わらない
といったケースです。
発注時点では問題なくても、最終的に期間内に完了しなければ対象外になるため、余裕を持ったスケジュール設定が不可欠です。
工事・設置を伴う設備の場合の「完了」の定義
工事付き設備の場合、「機械が届いた日=完了」ではありません。
- 設置完了
- 試運転・稼働確認(効果の検証)
- 納品書・検収書
まで終えて、初めて「完了」と判断されます。
この認識のズレが、不支給・減額につながる原因になります。
発注・納品の時期で起きやすい失敗と注意点
発注・納品のルールはシンプルですが、実務では次のような失敗が頻発します。
納期が間に合わず補助対象外になるケース
納期が1日でも期間を超えると、該当経費は補助対象外になります。
メーカー任せにせず、
自社で進捗管理する意識が重要です。
前倒し発注で全額NGになるケース
価格高騰や納期不安から、交付決定前に発注してしまうケースもあります。
この場合、理由に関係なく対象外となります。
支払いが期間外になり“不完了”と判断されるケース
分割払いや支払遅延により、支払いが期間外になると、事業が完了していないと判断されます。
まとめ:発注・納品のタイミング理解が“減額リスク”を避ける鍵
ものづくり補助金で最も多いトラブルは、発注・納品といった「時期の誤り」です。
押さえるべきポイントは次の3つだけです。
- 発注は必ず「交付決定日以降」
- 納品・検収・支払いは「補助事業実施期間内」に完了
- 前倒し発注と納期遅延は即対象外
このルールを正しく理解し、スケジュールを逆算して管理することで、減額・不支給リスクは大きく下げることができます。
