ものづくり補助金の「新サービス開発」採択事例を徹底解説|公表事例から読み解く傾向と評価ポイント

「新サービス開発」は、新製品よりも採択の難易度が高い領域です。理由は、モノがないため価値・効果・必要設備を定量的に説明しづらいから。

そのため、公表されている採択事例を分析しないと、「どのレベルなら採択されるのか」「どう説明すれば評価されるのか」がイメージしにくいのが特徴です。

この記事では、19〜21次で公表されている採択事例の傾向をもとに、新サービス開発で評価されるポイントと、自社が強化すべき点を整理します。

この記事を読めばわかること
  • ものづくり補助金における「新サービス開発」採択事例の傾向
  • 新サービス開発で評価されやすい事業内容・構成の考え方
  • サービスの価値や効果を定量的に示すための視点
  • 採択事例をもとに、自社の新サービス計画を見直す際の判断材料

本記事を監修する専門家

多田 舞樹
東京大学 教養学部卒業。
PwC Advisory合同会社を経て、2018年に補助金コンサルティングや事業承継支援を手がける株式会社HighAdoptionを設立。これまでに500件を超える補助金の採択実績を持つ。

テスト
目次

【2025年】ものづくり補助金「新サービス開発」採択事例(19〜21次)

19〜21次公募で公表された採択事例をもとに、新サービス開発として評価された取り組みの方向性を整理します。

19次

事例①運送業特化の損益管理効率化ツール開発による新サービス提供

事業者名株式会社ロジ勤怠システム
所在地東京都杉並千代田区
会社HPhttps://logikin.co.jp/

運送業・建設業など幅広い業種向けに勤怠管理と業務効率化システムを提供するITソリューション企業。

「ものづくり補助金」を活用し、運送業特化型損益管理と勤怠・業務効率化ツールの開発による新サービス提供に挑戦します。

事例②福祉施設向け特化保険営業ツールの開発

事業者名株式会社グリット
所在地東京都新宿区
会社HPhttps://grit-az.com

福祉施設・保育園・介護現場向けの課題解決ツールを提供するITサービス企業。

「ものづくり補助金」を活用し、福祉施設向け特化保険営業ツールの開発および提供体制の強化に挑戦します。

事例③監視ソフト、AIと連携するオブザーバビリティ新サービス開発

事業者名株式会社コムスクエア
所在地東京都中央区
会社HPhttps://www.comsq.com/

テレフォニー技術とITインフラ監視・運用ソリューションを提供する情報通信企業。

「ものづくり補助金」を活用し、AIと連携するオブザーバビリティ新サービスの開発および提供体制強化に挑戦します。

※参照元:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 第19次締切採択案件一覧

20次

事例①AI搭載WebマニュアルCMSの開発事業

事業者名株式会社スフィアリンクス
所在地東京都中野区
会社HPhttps://sphere-links.co.jp/

Webサイト制作や各種ITソリューションを提供し、企業のデジタル活用を支援する情報通信企業。

「ものづくり補助金」を活用し、AI搭載WebマニュアルCMSの開発と提供体制強化による新サービス創出に挑戦します。

事例②採用活動の面接調整と書類選考を自動化する採用管理SaaS事業

事業者名株式会社YOAKE
所在地東京都港区
会社HPhttps://yoake.one/2

企業のデジタルマーケティング支援や採用支援などを幅広く手がける情報通信業のITソリューション企業。

「ものづくり補助金」を活用し、採用活動の面接調整と書類選考を自動化する採用管理SaaSの開発および提供体制強化に挑戦します。

事例③AIを活用したシステムテスト自動化ツールの開発

事業者名CDXテクノロジー株式会社
所在地東京都中央区
会社HPhttps://www.cdxt.co.jp/

多様な業務システム・クラウド・AI技術を用いたソフトウェア開発・ITソリューションを提供する情報通信企業。

「ものづくり補助金」を活用し、AIを活用したシステムテスト自動化ツールの開発と提供体制の強化に挑戦します。

※参照元:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 第20次締切採択案件一覧

21次

採択事例から読み取れる「新サービス開発」の共通点や傾向

公表事例を整理すると、新サービス開発で評価されているポイントは大きく共通しています。

データ・分析結果など「無形価値」を定量化している

採択事例では、

  • 作業時間の削減率
  • コスト削減額
  • 生産性向上の数値

など、サービスの価値を数字で説明しています。

「便利になる」「効率化できる」といった抽象的表現だけでは、評価されにくい傾向があります。

サービス提供の核となる設備・システムが明確

公募要領では設備を導入するだけで、新サービス開発を伴わない事業は補助対象とならない旨が示されています。

採択事例では、

  • 導入する設備・システムが
  • 新サービスの中核として機能し
  • サービス提供に不可欠である

ことが、明確に説明されています。

サービスが生む付加価値が“数字”で説明できている

新サービスによって、

  • どのように売上が生まれるのか
  • 利益構造がどう変わるのか
  • 付加価値額がどのように増加するのか

といった点が、数値とロジックで整理されている計画が多く見られます。

社会課題・業界課題と結びついている

人手不足への対応や業務効率化など、生産性向上や付加価値向上につながる課題設定も、評価上重視される傾向が見られます。

事例から見る自社の新サービス計画に活かせるポイント

採択事例を参考にする際は、次の視点で自社計画を見直すと効果的です。

  • サービスの価値を数字で説明できているか
  • 設備導入の理由と必要性が明確か
  • サービス提供の流れを整理できているか
  • 顧客が受ける改善効果を論理的に説明できているか

これらが整理できていない場合、「構想段階」に見えてしまい、評価が伸びにくくなります。

サービスの価値を数字で説明できているか

新サービス開発で最も多い失敗は、「便利」「効率化」「高度化」といった定性的な表現だけで終わってしまうことです。

採択事例では、

  • 作業時間が何%削減されるのか
  • コストが年間いくら削減されるのか
  • 生産性(付加価値額)がどの程度向上するのか

といった形で、サービスの価値が数値で説明されています。

まずは、自社の新サービスが「どの指標を、どれくらい改善するのか」を言語化できているか確認することが重要です。

設備導入の理由と必要性が明確か

ものづくり補助金では、設備導入が新サービス開発に不可欠であることを示せなければ評価されません。

採択事例では、

  • なぜその設備・システムが必要なのか
  • 既存設備ではなぜ実現できないのか
  • 導入設備がサービス提供のどこを支えているのか

が、サービス内容とセットで説明されています。

「設備を入れるから新サービスをやる」ではなく、「新サービスを成立させるために、この設備が必要」
という関係性になっているかが、重要なチェックポイントです。

提供プロセスの流れを図示できるか

新サービスは形がない分、サービス提供の流れがイメージできない計画は評価されにくい傾向があります。

採択事例では、

  • サービス提供開始から終了までの流れ
  • 設備・システムがどの工程で使われるか
  • 顧客と事業者の役割分担

が整理されています。

文章だけでなく、工程図・フロー図として説明できるレベルかという視点で、自社計画を見直すと改善点が見えやすくなります。

顧客が受ける改善効果が定量と論理で説明できるか

評価されている新サービスは、「自社にとって良い」ではなく、「顧客にとってどんな改善があるのか」が明確です。

  • 業務時間の短縮
  • 人手不足の解消
  • 品質の安定化
  • コスト削減

といった効果が、なぜそのサービスで実現できるのかまで含めて説明されています。

顧客視点で「このサービスを使うと、何がどう変わるのか」を論理的に説明できているかが、重要な判断軸になります。

まとめ:新サービス開発の採択事例からわかること

新サービス開発の採択事例を見ると、評価されているポイントには共通する傾向が見られます。

  • サービスの価値が数字で説明されている
  • 設備導入がサービスの中核として位置づけられている
  • 提供プロセスが具体的に整理されている
  • 顧客が受ける改善効果が論理的に示されている

形のないサービスだからこそ、「どこで価値が生まれ、なぜ設備が必要なのか」を第三者が理解できるレベルまで落とし込むことが重要です。

採択事例を基準に自社計画を照らし合わせ、説明が弱い部分を補っていくことで、新サービス開発として評価される計画に近づけることができます。

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この記事を書いた人

補助金申請支援を行う株式会社High Adoptionの補助金事業部統括マネージャー。
年間100件以上の事業者に対し、補助金の採択へ導いている。

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