第2回省力化投資補助金の採択結果を分析|学術研究・技術サービス業の割合が1.6倍に増加
2025年8月8日、中小企業省力化投資補助金(一般型)の第2回公募の採択結果が発表されました。
申請件数・採択件数ともに前回より減少した一方、学術研究・専門・技術サービス業の採択割合が急増しています。
本記事では第2回の結果を業種別に分析、採択結果の傾向について考察しました。
- 第1回から採択が増えた業種、減った業種
- その考えられる理由
本記事を監修する専門家

多田 舞樹
東京大学 教養学部卒業。
PwC Advisory合同会社を経て、2018年に補助金コンサルティングや事業承継支援を手がける株式会社HighAdoptionを設立。これまでに500件を超える補助金の採択実績を持つ。
第1回から、申請数・採択数・採択率すべて減少
公募回 | 申請数 | 採択数 | 採択率 |
---|---|---|---|
1回 | 1,809 | 1,240 | 68.6% |
2回 | 1,160(前回比-649) | 707(前回比-563) | 60.9%(前回比-7.7%) |
第2回の公募は申請数・採択数・採択率のすべてが、第1回よりも減少する結果になりました。
第1回は、はじめての補助金制度と言うこともあり情報が少なく、まずは応募してみようという企業も多かったのではないでしょうか。
第2回の公募の頃には、申請の難易度や採択の傾向などの情報がWeb上などで確認できるようになりました。
その結果、自社には向いていない、対象外だと気づき申請を控える企業が減ったというのが、申請が減少した原因の1つだと考えられます。
また、採択数・採択率が減少した背景については、第1回の採択後、より精査した方が良いと思われる部分がみつかり調整が入った可能性、もしくは第1回の採択数が多いと聞き、気軽に応募できるのではと、内容を整えずに申請する企業が増えた可能性が推察されます。
【第2回省力化投資補助金】業種別の採択結果について
1回 | 2回 | |
---|---|---|
製造業 | 61.7% | 58.4% |
建築業 | 11.3% | 12.4% |
卸売業 | 5.9% | 6.8% |
学術研究、専門・技術サービス業 | 2.7% | 4.4% |
小売業 | 2.3% | 2.7% |
情報通信業 | 1.6% | 1.6% |
運輸業、郵便業 | 0.9% | 1.4% |
学術研究、専門・技術サービス業が2.7%→4.4%(1.6倍)
第1回では割合が2.7%だった「学術研究・専門・技術サービス業」が、第2回では4.4%と1.6倍に増加しました。
学術研究・専門・技術サービス業には、以下のような仕事が含まれます。
- 学術研究分野:大学の研究室、研究所等
- 専門:弁護士、公認会計士、税理士、司法書士などの士業、建築設計、測量、写真家やデザイナーなどのクリエイター職等
- 技術サービス:獣医、土木・建築コンサルタント、機械・電気コンサルタント、
- システムエンジニア、ソフトウェア開発、情報処理サービス等
第2回の「中小企業省力化投資補助金(一般型)第2回公募採択決定事業者一覧」をみてみると、以下のような採択事例が報告されています。
事業計画名 | 事業者名 |
---|---|
税理士事務所におけるAIを活用した労働集約型業務の効率化 | 税理士法人メディカルビジネス |
建物明渡訴訟業務を大幅に効率化する訴状作成システムの開発 | 弁護士法人長月法律事務所 |
省力化投資によるワンマン測量の実現!付加価値向上への取組み | 土地家屋調査士法人つくし登記事務所 |
学術研究、専門・技術サービス関連事業で、省力化投資補助金を検討している方は、実際に事例を参考にしながら申請の方向性を決定してみてください。
第1回に続き「製造業」が圧倒的な割合(61.7%)
製造業は、第一回で61.7%、第2回でも58.4%と採択割合のトップをキープしています。
製造業は組み立てや検査、梱包といった作業を多く実施しているため、ロボットやAIなどの自動化技術を導入しやすい傾向にあります。
人に頼っていた作業を省力化で効率化しやすい、生産性アップにつながる設備やシステムの導入計画が立てやすいなど、省力化投資補助金と相性が良い業種のため、製造業は第3回の採択でも上位に入ると予測されます。
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「建築業」が全体の2位(12.4%)
建築業の採択割合は、第1回の11.3%から第2回では12.4%へ上昇しています。
建築業は、重機や測量機器、素材製作に使用する機器などの導入など、省力化のための設備投資がしやすい業界のため、採択率が高くなっていると考えられます。
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その他、採択割合が増加した主な業種
製造業・建設業・学術研究以外にも、卸売業・小売業で採択割合が増加しています。
卸売業では第1回5.9%から第2回は6.8%へ、小売業では第1回の2.3%から第2回は2.7%へ上昇しています。
第2回の採択事例では、無人フォークリフト導入やAIを活用した在庫管理システム、商品情報作成のAI化など、これまでの人の手がメインだった作業を無人化、システム化したケースがみられました。
今後も在庫管理や棚卸し、セルフレジの導入など、時間や手間がかかる作業などで、省力化投資補助金の活用が検討されるのでは、と推察されます。
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その他、採択割合が減少した主な業種
情報通信業・宿泊業・飲食サービス業などは、第2回の公募で採択割合が減少しています。
情報通信業では第1回の1.6%が第2回は1.2%に、宿泊業では第1回の0.7%が第2回は0.3%に、飲食サービス業では第1回の0.6%が第2回では0.2%に減っています。
省力化投資補助金の対象となるのは大型の設備投資が多く、第2回の採択事例でも工場向けの機器やロボット、システムなどを導入した企業が多くみられました。
割合減少の理由としては、情報通信業の場合、商品を製造する業種ではないため大型設備などの導入理由が少ないこと。
また、宿泊・飲食サービス業の場合は、ロボットなどの導入余地はあるものの、人による接客が主に求められる仕事であることから、申請を検討する企業が減少。第1回の採択結果をみて、申請に適さない業種だと判断した、といった理由が考えられます。
まとめ
第2回省力化投資補助金の採択結果を分析すると、申請件数・採択件数が前回より減少する中で、業種別採択割合の構成に変化が見られました。
主な採択業種は、製造業(58.4%)、建設業(12.4%)がメインですが、卸売・小売業も採択率が上昇しています。
製造業、建設業は人手不足が課題になっている業種のため、今後も多くの企業で設備投資・システム導入で省力化投資補助金が活用されると予測されます。
卸売・小売業でも、採択数が増えた第2回の採択結果を参考に、次回以降の申請を検討する企業が増えるかもしれません。
学術研究・専門・技術サービス業は1.6倍に増加しており、研究機関や士業、測量やコンサルなどの分野で省力化投資補助金を活用した業務のAI化、システム化が活発になる可能性があります。
今後、省力化投資補助金を検討している方は、2025年8月29日まで実施している、第3回の採択結果がどのような傾向になるのかという点にも注目です。
業界全体の採択結果・傾向を分析しながら、自社に適した導入設備・システムの検討、申請の準備を進めていきましょう。
