情報通信業の「新事業進出補助金」採択事例を徹底分析|実際の採択結果から見る共通点と成功要因

「新事業進出補助金」は、中小企業等が既存事業と異なる事業への前向きな挑戦として、新市場・高付加価値事業への進出を後押しする制度です。

情報通信業では、AI・クラウド・DX支援などを中心に高い技術力を持つ一方、競合との差別化や、どの領域を“新事業”として位置づけるかが課題になりやすい業種です。

なお、“新事業”とみなされるためには、製品・サービスの新規性、市場の新規性、そして新事業売上構成比(売上高の10%または付加価値の15%以上)といった要件を満たす必要があります。

近年は、生成AIやSaaSを活用した業務支援だけでなく、医療・介護・製造・GXなど異分野との連携が進んでいます。

本記事では採択結果から、実際に採択された情報通信業の事例を紹介し、採択企業がどのように「新事業性」を示していたのか、その共通点や考え方を解説します。

※参照元:新規事業への進出により、企業の成長・拡大を図る中小企業の皆様へ 中小企業新事業進出補助金

この記事を読めばわかること
  • 情報通信業で実際に採択された「新事業進出補助金」の最新事例
  • 採択企業がどのように“新事業性”を具体的に示していたのか
  • 採択結果から見えてきた情報通信業特有の共通点と成功パターン
  • 今後の申請で意識すべきポイントと計画づくりのヒント

本記事を監修する専門家

多田 舞樹
東京大学 教養学部卒業。
PwC Advisory合同会社を経て、2018年に補助金コンサルティングや事業承継支援を手がける株式会社HighAdoptionを設立。これまでに500件を超える補助金の採択実績を持つ。

テスト
目次

【第1回】情報通信業(主にIT業者)の「新事業進出補助金」採択例

  • 公募期間:2025/4/22(火)~7/15(火)
  • 申請受付開始:2025/6/17(火)
  • 採択結果発表:2025/10/1(水)
  • 交付申請開始:2025/12/1(月)

事例①生成AIを用いた販売促進活動の自動化システム

事業者名rite株式会社
所在地東京都渋谷区
会社HP

CRM・マーケティング支援ツールの企画・開発とコンサルティングを提供し、EC/ブランド向けにアプリ化・データドリブン化を推進する企業。

新事業進出補助金に採択され、補助金を活用して、生成AIによる営業・販促自動化システムの開発に取り組みます。

事例②GX推進に向けたJ-クレジット運用支援SaaS構築事業

事業者名株式会社ナレッジクリエーションテクノロジー
所在地東京都千代田区
会社HPhttps://jpkct.com/ 

金融・医療・教育・公共分野の基幹系システム構築を手がけ、AI・IoT・スマート農業・宇宙航空領域にも展開するICTソリューション企業。

新事業進出補助金に採択され、補助金を活用して、脱炭素経営を支援するJ-クレジット運用SaaSの構築を計画しています。

事例③高齢者住宅支援クラウド構築事業

事業者名株式会社Sumapla
所在地東京都千代田区
会社HPhttps://www.sumapla.net/company 

賃貸住宅・店舗のオーナーと入居希望者をつなぐCtoC不動産プラットフォームの企画・開発・運営を主軸とするIT企業。

新事業進出補助金に採択され、補助金を活用して、高齢者住宅支援を目的としたマッチング型クラウドサービスを構築します。

事例④歯科医院のDX化を促進!患者が増えるAI分析システムの開発

事業者名株式会社プレジャーデサイン
所在地東京都中央区
会社HPhttps://pled.co.jp/ 

マーケティングコンサルティングからWeb/アプリ制作、DX・IT戦略支援、ヒューマンソリューション、補助金申請サポートまでをワンストップで提供する企業。

新事業進出補助金に採択され、補助金を活用して、歯科医院向けのAI分析システムを開発し、経営DXを支援します。

事例⑤連携領域を拡張しDX を推進する業務効率化プロダクトの開発

事業者名コンピュータスペック株式会社
所在地愛知県名古屋市西区
会社HPhttps://c-spec.net/ 

企業向けアプリケーション設計・開発、インフラ構築・保守運用、AI用教師データ作成(アノテーション)を含むICTソリューションを提供する老舗システム開発会社。

新事業進出補助金に採択され、補助金を活用して、業界横断型の業務効率化ツールを開発し、DX化を推進します。

事例⑥医療機関向け統合人事評価プラットフォームサービス事業

事業者名デジタル・アーク株式会社
所在地大阪府大阪市北区
会社HPhttps://digital-arks.co.jp/ 

中小企業のデジタルマーケティングに特化し、リスティング広告・SNS/ディスプレイ広告、SEO/MEO対策、Webサイト・ランディングページ(LP)・バナーの企画・制作をワンストップで手がける企業。

新事業進出補助金に採択され、補助金を活用して、医療機関向けの人事評価クラウドプラットフォームを新たに構築します。

※参照元:採択結果 中小企業新事業進出補助金

なぜこれらの情報通信業の事業計画が採択されたのか

今回紹介した事例は、情報通信業における「新事業進出補助金」の採択案件の一部です。

採択企業に共通しているのは、既存の開発・運用・マーケティング支援といった強みを活かしつつ、他業界の課題解決に踏み出している点

たとえば、

  • マーケティング支援を行う企業が生成AIによる営業自動化に挑戦
  • システム開発会社がGXや医療分野など社会課題に直結する領域に展開

など、技術そのものよりも「新たな市場において、どのように新しい価値を創り出すのか」という視点が重視されています。

情報通信業は革新スピードが速いため、「機能追加」だけでは新事業とはみなされません。

採択企業は、AI・クラウド・SaaSといった既存技術をベースに、異業種連携や社会的テーマとの結びつきを明確化することで新規性を打ち出しています。

採択されやすい情報通信業の共通傾向

採択事例をみると、共通しているのは技術の高度化よりも技術の新しい市場・事業へ展開に重点を置いていることです。

具体的には、

  • AI × マーケティング/販売支援:生成AIを用いた営業・販促自動化
  • IT × GX/環境:脱炭素経営を支援するSaaSや再エネ関連サービス
  • クラウド × 医療・福祉:医療機関や高齢者支援など社会課題領域への展開

といった方向性が目立ちます。

既存のシステム開発・広告・Web制作といった事業に加え、SaaSモデル・BtoBプラットフォーム・業界特化型DX支援など、資産性のあるビジネスモデルを描けている企業が採択されやすい傾向にあります。

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情報通信業の採択事例を参考に、自社でも新事業進出補助金の申請を前向きに検討しよう

情報通信業は、既にIT化が進んでいるため「何が新しいのか」を明確に説明する必要があります。

しかし、採択事例のように、既存技術を新たな市場に応用し、社会課題や業界課題の解決に結びつける発想があれば十分に新事業と評価されます。

AI・クラウド・SaaSといった自社技術を、医療・福祉・環境・地域産業など新しい領域に展開することが鍵です。

早い段階で専門家に相談し、市場性・新規性・事業性を明確にした計画づくりを行うことで、採択に近づくことができるでしょう。

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この記事を書いた人

東京大学大学院 工学系研究科に所属。
ものづくり補助金、東京・千葉の設備投資向け補助金など支援実績多数。これまでに支援した企業の累計採択額は1.5億円を超え、採択率95%という高い成果を上げている。

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