卸売業の「新事業進出補助金」採択事例を徹底分析|実際の採択結果から見る共通点と成功要因

「新事業進出補助金」は、中小企業等が既存事業と異なる事業への前向きな挑戦として、新市場・高付加価値事業への進出を後押しする制度です。

卸売業では、商品流通の中間を担う立場から、自社での企画・サービス化・DX化へとビジネスモデルを広げる動きが強まっています。

特に、デジタル販売、地域ブランド開発、AIやSaaSなど、「モノを売る」から「価値を創る」へと転換する事例が増えています。

本記事では採択結果から、実際に採択された卸売業の事例を紹介し、採択企業がどのように「新事業性」を示していたのか、その共通点や考え方を解説します。

※参照元:新規事業への進出により、企業の成長・拡大を図る中小企業の皆様へ 中小企業新事業進出補助金

この記事を読めばわかること
  • 卸売業で実際に採択された「新事業進出補助金」の最新事例
  • 採択企業がどのように“新事業性”を具体的に示していたのか
  • 採択結果から見えてきた卸売業特有の共通点と成功パターン
  • 今後の申請で意識すべきポイントと事業計画づくりのヒント

本記事を監修する専門家

多田 舞樹
東京大学 教養学部卒業。
PwC Advisory合同会社を経て、2018年に補助金コンサルティングや事業承継支援を手がける株式会社HighAdoptionを設立。これまでに500件を超える補助金の採択実績を持つ。

テスト
目次

【第1回】卸売業者の「新事業進出補助金」採択例

  • 公募期間:2025/4/22(火)~7/15(火)
  • 申請受付開始:2025/6/17(火)
  • 採択結果発表:2025/10/1(水)
  • 交付申請開始:2025/12/1(月)

事例①広告取得型の郷土料理店兼アンテナショップ事業

事業者名株式会社ピュアリマーケティング
所在地東京都千代田区
会社HPhttps://ka-pm.com/ 

地方特産品の卸売や地域プロモーションを手がける企業。

医療・美容機器の企画・開発から製造・販売まで手がけ、美容・歯科領域に特化したサービスも展開する企業。

新事業進出補助金に採択され、補助金を活用して、広告型アンテナショップ兼郷土料理店の運営事業を開始します。

事例②再エネ資源とバイオ有機肥料を利活用した循環社会構築事業

事業者名株式会社ハイポテック
所在地東京都中央区
会社HPhttps://hipotech.co.jp/ 

資源・機材などの卸売を行う企業。

環境プラントの設計・製作・施工および再生エネルギー(バイオガス発電)事業を展開するエンジニアリング企業。

新事業進出補助金に採択され、補助金を活用して、再生可能エネルギーと有機肥料を活用した循環型ビジネスを展開します。

事例③AIによる自動ライブコマース生成型SaaSの開発事業

事業者名株式会社クラウディア
所在地東京都港区
会社HPhttps://www.claudia.co.jp/ 

EC支援や卸売を行う企業。

健康食品の企画・通販を中心に、オンラインクリニックや広告制作、シェアハウス運営など多角的に事業を展開する企業。

新事業進出補助金に採択され、補助金を活用して、AIによるライブコマース自動生成SaaSの開発に取り組みます。

事例④中小企業向けノーコードAIチャットSaaS開発事業

事業者名株式会社FLORe
所在地東京都港区
会社HPhttps://flore-inc.co.jp/ 

営業支援や販促代行を行う企業。

営業・マーケティング支援サービスを提供する企業。

新事業進出補助金に採択され、補助金を活用して、AIチャットによる業務効率化SaaSの開発に挑戦します。

事例⑤AI×人気インフルエンサーのオンライン占い結果提供アプリ

事業者名株式会社ルナファクトリー
所在地東京都新宿区
会社HPhttps://lunafactory.co.jp/ 

マーケティング・販促支援を行う企業。

オリジナル・ライセンスキャラクターを用いたタロットカード・オラクルカード等の企画・開発から製造・販売までを手がけるグッズメーカー。

新事業進出補助金に採択され、補助金を活用して、AIとインフルエンサーを掛け合わせたBtoC向けデジタル占いアプリを開発します。

※参照元:採択結果 中小企業新事業進出補助金

なぜこれらの卸売業者の事業計画が採択されたのか

今回紹介した事例は、卸売業における「新事業進出補助金」の採択案件の一部です。

採択企業に共通しているのは、既存の商流・ネットワーク・商品開発力を活かしながら、新しいビジネスモデルを構築している点

たとえば、医療・美容機器の販売を行っていた企業が広告型アンテナショップの運営に挑戦したり、環境プラントの設計企業が再エネ・循環ビジネスに踏み出す。

また、健康食品の通販企業がAI×ライブコマースのシステム開発に着手するなど、いずれも自社の得意分野をもとに「異分野との掛け合わせ」で新たな価値を生み出しています。

卸売業は、従来の「仕入れて売る」ビジネスから脱却し、情報・IT・サービスを融合した事業構造の転換を進めている企業が多いのが特徴です。

こうした“自社起点の事業開発”が評価され、採択につながったと考えられます。

採択されやすい卸売業の共通傾向

採択事例をみると、共通しているのは「モノの流通」から「価値の創出」へ軸足を移していることです。

具体的には、

  • 卸売 × IT:AIやSaaSを活用した新たな販売支援・業務支援の仕組みづくり
  • 卸売 × サービス:アンテナショップ・飲食・観光など体験型の事業モデルへの展開
  • 卸売 × エンタメ:キャラクター・占い・インフルエンサーなどコンテンツとの融合

といった「既存顧客基盤を活かした新事業進出」が目立ちます。

共通するのは、取引先や顧客との関係性をデジタル化・サービス化する動きです。

単に販売チャネルを増やすだけでなく、データ・体験・仕組みを通じて継続的な価値提供に加えて、『既存事業との違い(新規性)を具体的に説明できているか』が採択のポイントになっています。

あわせて読みたい
【補助金支援者が考える】建築業者が新事業進出補助を申請するコツとポイント 建設業者が新事業進出補助の申請をする際のコツとポイントを解説。対象経費の区分や資金繰りへの備え、外部支援者との契約注意点をまとめました。

卸売業の採択事例を参考に、自社でも新事業進出補助金の申請を前向きに検討しよう

卸売業は、流通の中心に位置しながらも、価格競争や取引依存に悩む企業が少なくありません。

しかし、今回の採択事例のように、IT・サービス・コンテンツなど他領域と掛け合わせることで、ビジネスの幅を広げるチャンスがあります。

「新事業進出補助金」は、新事業への進出を後押しする制度です。

自社の流通網や顧客基盤を活かし、既存事業とは異なる新規事業で新たな価値を提供できるかを明確にすることで、採択に近づく計画を立てることができます。

記事下部テスト
記事をシェアする

この記事を書いた人

東京大学大学院 工学系研究科に所属。
ものづくり補助金、東京・千葉の設備投資向け補助金など支援実績多数。これまでに支援した企業の累計採択額は1.5億円を超え、採択率95%という高い成果を上げている。

目次