【補助金支援者が考える】卸売業者が新事業進出補助を申請するコツとポイント

新事業進出補助金の申請を検討している卸売業者の中には、「採択される可能性を少しでも高めたい」「どんな点に気をつければよいのか知りたい」と考える方も多いのではないでしょうか。

制度は始まったばかりで明確な傾向はまだ見えませんが、他の補助金申請の実務や業種特有の事例を踏まえると、押さえるべき基本ポイント注意点が見えてきます。

本記事では、卸売業者が申請する際に意識すべきコツや注意点を整理し、採択率を高めるための実務的な視点を解説します。

この記事を読めばわかること
  • 卸売業が申請で意識すべき基本ポイント
  • 他補助金の実務経験から見える申請のコツ
  • 申請全体で注意すべきリスクや対応策
  • 採択率を高めるためのまとめ視点

本記事を監修する専門家

多田 舞樹
東京大学 教養学部卒業。
PwC Advisory合同会社を経て、2018年に補助金コンサルティングや事業承継支援を手がける株式会社HighAdoptionを設立。これまでに500件を超える補助金の採択実績を持つ。

目次

卸売業者が新事業進出補助金を申請する際に意識すべき基本ポイント

卸売業が新事業進出補助金を申請する際に最も重要なのは、自社の取組が「新事業進出」に該当するかどうかです。

これは卸売業者に限らず、すべての業種に言えることでもあります。

既存商品の流通方法を少し工夫しただけでは対象とならず、新分野展開や市場の転換といった明確な変化が求められます。

また、本補助金では「機械装置・システム構築費」または「建物費」に関する経費を必ず計上しなければなりません。

大きな設備投資を行わない傾向にある卸売業にとって、大きなハードルとなる部分かもしれません。

単純な仕入れ拡大や在庫強化は補助対象外となるため、新分野展開や市場の転換のための設備投資を伴う計画が必要です。

「新事業進出の定義」に該当するかどうか

新事業進出補助金で問われるのは「製品等の新規性」と「市場の新規性」です。

例えば、従来は食品卸を行っていた企業が、医療機関向けの衛生資材流通に参入するようなケースは評価されやすいですが、既存商品を別のルートで販売する程度では「新規性」はなく補助対象外となるでしょう。

卸売業は既存の流通モデルが強く根付いているため、「従来との違い」を示すことが特に難しい業種です。

だからこそ、新しい顧客層の獲得や新しい顧客層の獲得といった「新しい市場」をどう切り開くのかを、具体的なデータや根拠とあわせて説明する必要があります。

中小企業等が行う、既存事業と異なる事業への前向きな挑戦であって、新市場・高付加価値事業
への進出を後押しすることで、中小企業等が企業規模の拡大・付加価値向上を通じた生産性向上
を図り、賃上げにつなげていくことを目的とします。

※引用元:1.事業の目的 中小企業新事業進出促進補助金 公募要領(第2回)

補助対象経費と対象外経費(機械装置費など)を区分する

卸売業では商品の仕入れや在庫管理が経費の大部分を占めますが、そもそもこれらは補助対象外です。

本補助金では「機械装置・システム構築費」または「建物費」が必須となるため、単に仕入れを拡大するだけでは申請できません。

一方で、倉庫の新設物流効率化のためのシステム導入(在庫管理システム、AIを活用した需要予測ツールなど)は補助対象になり得ます。

これらの投資を事業計画に組み込み、卸売業としての強みを活かしつつ「新市場開拓」に結びつける工夫が求められます。

※参照元:6.補助対象経費 中小企業新事業進出促進補助金 公募要領(第2回)

他補助金の実務経験から見える申請のコツ【卸売業編】

卸売業が新事業進出補助金を申請する際にも、「なぜ今その新分野に取り組むのか」という必然性の説明が欠かせません。

他の補助金申請でも売上増加や生産性向上の根拠が重視されますが、本補助金ではそれ以前に「新事業での挑戦」であることが大前提です。

卸売業の場合は、取扱商品の変更だけでは新事業とみなされず、事業モデルそのものを変革する必要があります。

たとえば、デジタルプラットフォームを活用した新しい流通モデルの構築など新規販路開拓など。

これらを政策動向や市場データと結び付けて説明できれば、採択の可能性を高められるでしょう。

卸売業者が新事業進出補助金を申請する際の注意点

卸売業が申請する際には、制度要件を満たすだけでなく、実務上の落とし穴を避ける必要があります。

特に、「補助対象外経費の誤計上」「資金繰りの負担」「外部支援者との契約条件」の3点は重要です。

これらは採択後の事業実施や会計処理に直結するため、早い段階から整理しておくことが求められます。

補助対象外となりやすい経費に注意する

卸売業では最大の経費である「商品の仕入れ費用」が補助対象外である点に注意が必要。

卸売業にとって仕入れは必要不可欠ですが、補助金の対象はあくまで設備投資やシステム導入に限定されています。

誤って仕入費を計上すると不採択となるリスクが高まります。

物流システム倉庫設備など、対象経費にあたる投資を中心に申請計画を構築することが重要です。

大規模投資による資金繰りリスクを想定する

補助金は後払い方式であり、採択されても事業開始時には自己資金や融資による立て替えが必要です。

卸売業にとっても、倉庫建設や物流拠点の整備には数千万円単位の投資が必要になる場合があります。

資金計画を立てずに申請すると、採択後に資金ショートを起こす可能性があるため要注意。

外部支援者との契約条件を事前に確認する

補助金申請を支援会社やコンサルタントに依頼するケースも増えています。

その際、報酬形態や業務範囲をあいまいにしたまま契約すると、後々のトラブルにつながります。

成果報酬型は採択時の負担が大きく、固定報酬型は不採択時でも費用が発生します。

契約条件を文書で明確化し、自社に合った形態を選ぶことが不可欠です。

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まとめ|卸売業が新事業進出補助金を成功させるために

新事業進出補助金を申請する際には、「新事業進出に該当するかの判断」「補助対象経費の正しい区分」「資金繰りや支援会社との契約条件」といった要素が成功の鍵になります。

とくに卸売業は補助対象外の仕入費用が中心となるため、対象経費に沿った設備投資を計画する工夫が必要です。

制度自体が始まったばかりで事例も少ない今こそ、準備段階からリスクを整理し、確実に採択につながる申請を心がけましょう。

自社での対応に限界を感じる場合は、卸売業者の補助金申請実績を持つ支援会社や専門家の力を借りるのも有効な手段です。

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この記事を書いた人

補助金申請支援を行う株式会社High Adoptionの補助金事業部統括マネージャー。
年間100件以上の事業者に対し、補助金の採択へ導いている。

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