製造業が320社で最多(採択率51.9%)!第1回 新事業進出補助金の採択結果と傾向分析【業種別・地域別まとめ】

2025年10月1日、「中小企業 新事業進出補助金」の第1回公募の採択結果が公表されました。
初回ながら全国で3,000件を超える申請があり、採択率は37.2%。
製造業や卸売業を中心に幅広い業種から申請が集まりました。
本記事では、第1回の採択結果をもとに、業種別・地域別・申請額別の傾向を整理しています。
- 第1回 新事業進出補助金の採択率・応募件数・採択件数の概要
- 製造業・卸売業・建設業など業種別の採択傾向と特徴
- 東京都・大阪府・愛知県など地域別の採択動向
- 申請額(投資規模)と採択率の関係
- 今後の公募に向けて意識すべき「新規性×実現性」のポイント
本記事を監修する専門家

池上 翔大
補助金申請支援を行う会社で補助金事業部統括マネージャーを勤める。
年間100件以上の事業者に対し、補助金の採択へ導いている。
第1回 新事業進出補助金の採択率は37.2%
第1回 | 採択率 | 応募・採択件数 | 参照 |
---|---|---|---|
新事業進出補助金 | 37.2% | 応募:3,006 採択:1,118 | 新事業進出補助金 第1回公募の採択結果について |
省力化補助金 | 68.5% | 応募:1,809 採択:1,240 | 一般型公募(第1回) 採択結果について |
ものづくり補助金 | 62.5% | 応募:2,287 採択:1,429 | 採択結果 |
成長加速化補助金 | 16.3% | 応募:1,270 採択:207 | 採択結果概要 |
第1回の新事業進出補助金の採択率は37.2%でした。
他の主要補助金の初回採択率と比べると、中間的な難易度といえます。
新制度ながらも「制度定着を優先した大量採択」ではなく、新事業としての妥当性や実現性を重視する審査が行われたと考えられます。
初回から選別色が強い傾向にあり、今後はより内容精査が進む可能性があります。
【第1回新事業進出補助金】業種別の採択結果(採択件数順)
業種 | 採択件数(採択率) | 応募件数 |
---|---|---|
製造業 | 320(51.9%) | 617 |
卸売業・小売業 | 166(36.2%) | 458 |
建設業 | 158(36.5%) | 433 |
宿泊・飲食サービス業 | 77(24.4%) | 316 |
情報通信業 | 71(31.6%) | 225 |
上位5業種
業種別に見ると、製造業が過半数の採択率を記録し、突出した結果となりました。
一方で、宿泊・飲食業は2割台にとどまり、「新市場進出」としての要件を満たす難しさが浮き彫りになりました。
1位:製造業が応募件数・採択数ともに最多で320/617社(51.9%)
製造業は採択率・件数ともに最多で、既存技術を応用した新製品開発や他分野への展開が多く評価されたと見られます。
生産設備の更新だけでなく、明確な市場拡大のストーリーを描いた計画が採択につながったと考えられます。
※内部リンク:作成予定
2位:卸売業・小売業 166/458社(36.2%)
卸・小売業では、EC化や物流効率化などデジタル活用を伴う新事業多くありました。
既存販売チャネルの延長ではなく、新たな販路やビジネスモデルへの転換を明確に示した企業が高評価を得ています。
- えりも町での鮮魚加工場整備とえりも産ブランド魚の全国EC販売
- 工事現場のニーズに応える、オーダーメイド作業着のEC販売事業
- 中小企業向けノーコードAIチャットSaaS開発事業
- 出張買取業務の知見を活かしたデジタル管理システム運用事業
など
※内部リンク:作成予定
3位:建築業 158/433社(36.5%)
建設業は採択率36.5%と平均的な水準。
地域課題解決型など、社会的意義の高い取組が採択されやすい傾向もあるのではないでしょうか。
- 廃校を利用した中小電気工事業向け技能人材育成施設の展開
- 庄内地域における解体工事事業計画
- 地域の安心住まいを守る次世代足場を核としたワンストップ塗装業
- 空き家を再生し、暮らすように旅する宿泊施設の開設・運営
など
※内部リンク:作成予定
4位:宿泊・飲食サービス業 77/316社(24.4%)
宿泊・飲食業は採択率が低く、新規サービス開発や地域連携が明確な計画に限って採択が進んだと見られます。
単なる改装やメニュー拡充では「新市場進出」には該当しません。
本補助金は製品等と市場の双方で新規性が必要であり、これらだけでは要件を満たさないためです。
5位:情報通信業 71/225社(31.6%)
情報通信業は応募件数は少ないものの、一定の採択率を維持。
SaaS・DX支援・データ利活用など、他産業との連携型事業が採択傾向にあります。
一方で、自社サービスの改良レベルでは採択が難しく、革新性や社会的波及効果の説明が重要です。
※内部リンク:作成予定
##【第1回新事業進出補助金】地域別の採択結果
上位 | 採択率 | 採択件数 | 応募件数 |
---|---|---|---|
東京都 | 34.9% | 199 | 571 |
大阪府 | 37.7% | 118 | 313 |
愛知県 | 39.9% | 83 | 208 |
兵庫県 | 33.3% | 48 | 144 |
神奈川県 | 33.9% | 37 | 109 |
福岡県 | 35.6% | 36 | 101 |
下位 | 採択率 | 採択件数 | 応募件数 |
---|---|---|---|
島根県 | 36.4% | 4 | 11 |
青森県 | 40.0% | 4 | 10 |
高知県 | 50.0% | 4 | 8 |
鳥取県 | 33.3% | 1 | 3 |
第1回の新事業進出補助金では、東京都・大阪府・愛知県が応募・採択ともに上位を占めました。
いずれも製造・情報通信・卸小売といった都市型産業が集中しており、応募件数の多さとともに、事業計画の完成度の高さが採択結果に反映されていると考えられます。
【東京都】業種別の採択件数(上位)
業種 | 採択件数 |
---|---|
情報通信業 | 52 |
学術研究、専門・技術サービス業 | 30 |
卸売業、小売業 | 24 |
製造業 | 19 |
建設業 | 12 |
サービス業(他に分類されないもの) | 19 |
東京都では「情報通信業(52件)」と「学術研究・専門サービス業(30件)」が採択件数の上位を占め、知識集約型の新事業が中心となりました。
首都圏ならではのIT企業や研究系スタートアップの申請が多く、デジタル・DX関連の取組が目立ちます。
一方で、製造業や建設業の採択件数は少なく、他地域に比べて非製造・サービス系分野が主流という構造が見られます。
今後も東京都では、技術サービス・情報系企業を中心とした“無形資産型の新事業進出”が伸びる可能性が高いと考えられます。
【大阪府】業種別の採択件数(上位)
業種 | 採択件数 |
---|---|
製造業 | 53 |
卸売業、小売業 | 15 |
建設業 | 15 |
宿泊業、飲食サービス業 | 10 |
学術研究、専門・技術サービス業 | 6 |
情報通信業 | 5 |
サービス業(他に分類されないもの) | 3 |
大阪府では「製造業(53件)」が圧倒的多数を占め、次いで卸売・小売業や建設業が並びます。
関西圏の強みである中小製造業の技術転用・設備投資を伴う新事業が多く、全国平均を上回る採択率(37.7%)につながったと考えられます。
また、宿泊・飲食業の採択も10件あり、観光・地域消費を軸としたサービス業の挑戦も一定数見られます。
総じて、現場発の実現可能性を重視した計画が評価された傾向といえます。
【愛知県】業種別の採択件数(上位)
業種 | 採択件数 |
---|---|
製造業 | 30 |
建設業 | 21 |
卸売業、小売業 | 12 |
学術研究、専門・技術サービス業 | 4 |
情報通信業 | 1 |
サービス業(他に分類されないもの) | 5 |
愛知県では「製造業(30件)」と「建設業(21件)」が突出しており、他地域に比べてモノづくり系の採択比率が高い点が特徴です。
特に自動車・部品産業を中心とした製造業の新分野展開が多く、地域の産業構造と整合的な結果となっているでしょう。
情報通信や学術研究系は少数で、現場主体・技術実装型の新事業進出が主流とみられます。
今後も、設備投資や共同開発など、実体経済に直結するタイプの事業が中心となる可能性が高いでしょう。
【件数の少ない都道府県】業種別の採択件数
島根県(4) | 青森県(4) | 高知県(4) | 鳥取県(1) | |
---|---|---|---|---|
製造業 | 2 | 1 | 1 | 0 |
宿泊業、飲食サービス業 | 0 | 1 | 1 | 0 |
建設業 | 1 | 0 | 0 | 0 |
不動産業、物品賃貸業 | 0 | 1 | 0 | 0 |
情報通信業 | 0 | 0 | 1 | 0 |
電気・ガス・熱供給・水道業 | 1 | 0 | 1 | 0 |
農業、林業 | 0 | 0 | 1 | 0 |
卸売業、小売業 | 0 | 0 | 0 | 1 |
島根・青森・高知・鳥取などの県では、採択件数がいずれも5件未満と少なく、業種ごとの傾向を判断するのは難しい状況です。
製造業や建設業などの従来型産業に加えて、農業や情報通信など幅広い分野から申請が見られるものの、地域ごとの特徴を語るほどのデータ量はありません。
現時点では、地域産業の規模や応募数そのものが採択件数に直結しており、今後の公募回での動向を見て判断するのが妥当といえます。
【第1回新事業進出補助金】補助金申請額について
採択率 | 採択件数 | 応募件数 | |
---|---|---|---|
0~500万未満 | 0% | 0 | 0 |
500~1,000万未満 | 28.5% | 117 | 411 |
1,000~1,500万未満 | 30.2% | 154 | 510 |
1,500~2,000万未満 | 37.3% | 148 | 397 |
2,000~2,500万未満 | 37.1% | 283 | 763 |
2,500~3,000万未満 | 40.6% | 121 | 298 |
第1回の補助金申請額の分布と採択件数割合を見ると、応募件数は「2,000~2,500万円未満」の層が最も多く、採択率も40.6%と全体を上回る水準でした。
一方、1,000万円未満の小規模案件では採択率が20%台にとどまり、一定規模の投資を伴う事業計画が優先された傾向が見られます。
これは本補助金が「新市場への進出」を目的としていることから、明確な成長性・波及効果を示せる規模感のある計画が評価された結果と考えられます。
逆に、金額が小さい計画は「既存事業の延長」と判断されやすく、採択に結びつきにくかった可能性があります。
全体として、2,000万円前後を目安に、投資規模と実現性のバランスを取った申請が採択の中心層といえそうです。
まとめ
第1回の採択率は37.2%と、中位水準でのスタートとなりました。
製造業を中心に実業系の申請が多く、新市場進出の明確さと計画の実現性が採択の鍵といえます。
都市部では応募件数が多い一方、地方では応募件数が少なく、地域特性を読み取るには今後の公募結果の蓄積が必要です。
また、2,000万円前後の中規模案件が最も採択されやすい傾向も見られました。初回結果からは、「新規性×実現可能性」を両立した事業計画が重視されていることが明確です。
第2回以降は応募増加に伴い、計画の完成度・新規性・実現性の説明が一層重視されると見込まれます。