卸売業は物流改善に効果大!省力化投資補助金(一般型)申請のポイントと注意点
人手不足や燃料費・物流コストの高騰など、卸売業が直面する課題は年々深刻化しています。
こうした中、省力化投資補助金(一般型)は、物流や在庫管理の効率化を図る卸売業にとって有効な制度です。
今回は、卸売業が省力化投資補助金を申請する際のポイントや注意点を解説します。
- 卸売業が省力化投資補助金(一般型)と相性抜群な理由
- 倉庫管理・物流改善やサプライチェーン効率化につながる仕組み
- 申請で重視すべき数値化・必要性の明確化・取引先への波及効果
- 補助率・上限額、対象経費、他補助金との重複など申請時の注意点
本記事を監修する専門家

多田 舞樹
東京大学 教養学部卒業。
PwC Advisory合同会社を経て、2018年に補助金コンサルティングや事業承継支援を手がける株式会社HighAdoptionを設立。これまでに500件を超える補助金の採択実績を持つ。
卸売業は物流改善につながるから、省力化投資補助金と相性抜群!
卸売業は物流拠点や配送網を持ち、在庫管理・配送コストの最適化が経営に直結します。
そのため、卸売業は物流効率化と「機械装置・システム構築費」の親和性が高い業界。
省力化投資補助金(一般型)では、必須経費として必ず「機械装置・システム構築費」を含める必要があります。
中小企業基盤整備機構が公開している第2回の採択結果では、1,500~1,750万円未満の申請案件が18.5%と最も多く、物流改善にかかる大型投資が補助金で後押しされている実態がわかります。
※参照元:一般型公募(第2回)採択結果について
倉庫管理・在庫効率化システムの導入に活用できる
卸売業の現場では、商品の入出庫や在庫管理に多くの人手と時間がかかっています。
省力化投資補助金(一般型)では、倉庫管理システム(WMS)や自動棚卸システム、IoT機器の導入に加え、これらに関連するシステム構築費やソフトウェアの購入・構築も補助対象。
また、クラウド型WMSなどの利用料については、補助事業実施期間内に発生する部分に限り補助対象であり、期間外分は対象外(按分計算が必要)となります。
通信費など最低限の付帯費は対象になる場合もあります。
これらを導入することで、在庫精度の向上や棚卸作業の効率化、欠品・過剰在庫の削減につながります。
特に複数拠点で在庫を抱える卸売業では、クラウド型の在庫管理システムを導入することで、リアルタイムで在庫を把握し、取引先との情報共有もスムーズになるでしょう。
※参照元:一般型とは 中小企業省力化投資補助金
物流・配送コスト削減と直結する
倉庫管理システム(WMS)や自動仕分け装置、搬送ロボットなどを導入することで、物流現場の作業効率が大幅に改善され、配送コストの削減に直結します。
たとえば、自動仕分け装置の導入により、従来1時間に500件だった仕分け作業が800件まで可能になり、人件費や配送リードタイムを削減できる事例もあります。
サプライチェーン全体の省力化にも波及する
卸売業は、仕入先から小売業者までのサプライチェーン全体をつなぐ重要な役割を担っています。
そのため、在庫管理システムや配送ルート最適化システムを導入すれば、自社だけでなく取引先にもメリットが波及します。
「在庫過多や欠品を減らす」「配送効率を高める」といった改善は、サプライチェーン全体の信頼性を高める効果があり、取引先からの評価向上にもつながるでしょう。
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卸売業が申請する際のポイント
省力化投資補助金(一般型)を申請する場合、業界特性を踏まえた計画づくりが重要です。
以下の点を意識して事業計画を作成しましょう。
在庫管理・物流改善の効果を数値で示す
補助金の基本要件には、「労働生産性の年平均4%以上向上」などがあります。
そのため、物流改善や在庫管理システム導入による効果を、削減時間・人員効率・在庫回転率といった数値で示す必要があります。
※参照元:一般型とは 中小企業省力化投資補助金
「ピッキング作業を自動化し、年間2,000時間の作業削減が可能」
「在庫管理精度が向上し、欠品率を3%から1%に低減」など、具体的な数値で根拠を提示しましょう。
導入システムや機器の必要性を明確にする
「なぜその機器やシステムが必要なのか」を明確に説明することが重要。
「配送ドライバー不足に対応するため、倉庫内自動搬送ロボットを導入する」「取引先から在庫状況のリアルタイム共有を求められているため、クラウド型WMSを導入する」など、業界特有の背景と課題を明確にすると説得力が増します。
取引先・サプライチェーン全体に与える効果を強調
卸売業は単独の改善効果だけでなく、取引先へのメリットを強調することができます。
「発注情報をシステム連携し、取引先の在庫調整負担を軽減」「配送効率改善で小売業者への納品遅延を削減」など、波及効果を示すことで採択につながりやすくなります。
【卸売業向け】省力化投資補助金申請時の注意点
省力化投資補助金は、大きなメリットがある一方で、申請には注意点もあります。
誤った理解のまま申請すると不採択のリスクが高まります。
補助事業実施期間と報告期限に注意
補助事業の実施には期限が定められています。採択発表日から20か月以内、かつ交付決定から18か月以内に完了する必要があり、さらに実績報告は完了日から30日以内または期限日のいずれか早い日までに提出しなければなりません。
建設業は工期や納期が遅れるリスクがあるため、余裕をもったスケジュール管理が欠かせません。
補助率と補助上限額を理解して計画を立てる
補助率は、中小企業者の場合1/2、小規模事業者・再生事業者の場合2/3。
ただし、補助金額が1,500万円を超える部分については1/3に下がります。
また、従業員数に応じて補助上限額が定められており、750万円から8,000万円(特例で最大1億円)までとなります。
これらを踏まえて導入計画を立てることが重要です。
※参照元:補助率および補助上限額について 一般型とは 中小企業省力化投資補助金
システム導入費用の補助対象範囲を確認する
倉庫管理システムや配送ルート最適化ソフトの導入費用は補助対象となりますが、システム構築・設定・連携等は補助対象になり得る一方で、保守・運用などのランニング費は原則対象外です。
ただし、補助事業実施期間内に発生するクラウド利用料や最低限の通信費は対象になる場合があります。
そのため、費用の区分を明確にし、按分した上で申請することが重要です。
IT導入補助金などとの重複利用に注意
「IT導入補助金」も在庫管理や受発注システムに使えるため、目的が重複する場合があります。
同じシステムを複数の補助金に申請することはできません。
ただ、業務効率化システムを省力化投資補助金に申請し、別のシステムをIT導入補助金に申請することは可能です。
補助金ごとの目的と対象範囲を整理して申請しましょう。
セキュリティ対策や法令遵守面での記載漏れに注意
システム導入においては、情報セキュリティ対策や個人情報保護法などの法令遵守もチェックされます。
「顧客データを暗号化して保管」「多重認証による不正アクセス防止」など、セキュリティや法令遵守の取り組みを計画書に記載しましょう。
まとめ|卸売業の物流効率化を加速する補助金活用を
卸売業は、物流や在庫管理の改善が経営に直結するため、省力化投資補助金(一般型)との相性が良い業界です。
ただし、システム導入費用の範囲や他の補助金との使い分け、セキュリティ面での記載漏れなど、注意すべき点もあります。
自社やサプライチェーン全体の課題を明確化し、効果を数値で示した計画を作成することで、補助金の採択可能性は大きく高まります。
物流効率化などを進めたい卸売業の方は、ぜひ省力化投資補助金の活用をご検討ください。