製造業は相性抜群!省力化投資補助金(一般型)申請のポイントと注意点

人手不足の深刻化や原材料価格の高騰といった課題を前に、省力化・自動化への投資が急務となる中、省力化投資補助金(一般型)では製造業者の申請・採択が多数報告されています。

今回は、次の公募に向けて製造業が省力化投資補助金を申請する際のポイントと注意点を解説いたします。

この記事を読めばわかること
  • 製造業が省力化投資補助金(一般型)と相性抜群な理由
  • 大型設備投資を補助金で大幅に軽減できる仕組み
  • 製造業が申請する際のポイント
  • 申請時の注意点と失敗を避ける方法

本記事を監修する専門家

多田 舞樹
東京大学 教養学部卒業。
PwC Advisory合同会社を経て、2018年に補助金コンサルティングや事業承継支援を手がける株式会社HighAdoptionを設立。これまでに500件を超える補助金の採択実績を持つ。

目次

製造業は設備投資が大きいため、省力化投資補助金と相性抜群!

設備投資の機会が多い製造業は、省力化投資補助金(一般型)の必須経費とも相性が良い業界です。

そのため、補助金の活用に適しています。

製造業と省力化投資補助金は相性が良い、と言われる理由をみてみましょう。

製造業は必須経費(機械装置・システム導入費)

省力化投資補助金(一般型)の申請では、経費として機械装置・システム構築費を必須で含めなければいけないというルールがあります。

製造業で省力化を検討する場合、工場で使用する大型の機械や生産ライン設備、AIなどのシステム導入などが候補に挙がる場合が多く、補助金との親和性が高い業界です。

第1回、第2回の公募では、プレスや旋盤、研削などに使用する加工機

溶接や計測、搬送、板金加工などに活用するロボットや自動化システム、切断や切削などを省力化する設備クレーン装置などさまざまな採択事例が報告されています。

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大型投資の負担を大きく軽減できる

製造業の設備投資は、工場や生産ラインで導入する設備規模が大きいケースが多く、金額も膨らみがちです。

中小企業基盤整備機構が発表している第2回の採択結果では、1,500~1,750万円未満の価格帯で申請した企業がもっとも多く18.5%に上るなど、大型投資の実現につながっています。

※参照元:一般型公募(第2回) 採択結果について

自社で設備やシステムを購入する場合、設備投資の負担やリスクが大きくなりますが、省力化投資補助金を活用すれば、投資額1500万円までは1/2、1500万円を超える部分も1/3が補助(従業員数ごとに上限あり)されます。

省力化につながる大型投資を検討しているなら、補助金制度の活用を検討してみてください。 

他の補助金よりも省力化・自動化に特化している

製造業が活用できる補助金は、ものづくり補助金新規事業進出補助金などいくつかありますが、省力化投資補助金は省力化・自動化を支援する目的があります。

一例ですが「ものづくり補助金」の場合、新製品や新サービスの開発を支援する目的があり、現場で問題になりがちな人材不足改善や効率化には直結しません

多くの企業が少子化などの問題で、省力化・自動化を検討する中、自社の課題を機械装置やシステムなどの力で改善できる補助金制度です。

経営者の悩みや現場のニーズに特化した制度だといえます。

製造業が申請する際のポイント

省力化投資補助金(一般型)を申請する場合、定められた要件を満たした書類の準備が求められます。

製造業が省力化投資補助金を活用する場合に覚えておきたいポイントを解説いたします。

省力化・効率化効果を数値で示す

省力化投資補助金(一般型)には、

  • 労働生産性を年平均4%以上向上させる
  • 一人あたりの給与支給総額が、最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上、または給与支給総額の年平均成長率+2.0%以上増加すること

といった基本要件があります。

※参照元:一般型とは 中小企業省力化投資補助金(一般型)

申請の際は、これらの要件を満たす施策であると証明するために、稼働率や歩留まりの改善、人員削減効果などを数値で表しましょう。

たとえば、自動切削ロボット導入により作業時間を年間○○時間削減できる。その結果、労働生産性を現在よりも5%向上できる、といった「何を導入して、どのような成果が得られるのか」という点を記載しましょう。

導入機械・システムの必要性を明確化

機械設備やシステムなどを製造業の現場に導入する場合、「なぜその機械が必要なのか」という理由を書面に含めると、審査員へ必要性を伝えられます。

「作業員の高齢化が進み、これまで手作業でやっていた工程の人員が今後足りなくなる」「〇〇という商品の需要が年々増しているため、ニーズに応えるために生産能力の強化が必要」など、補助金を検討している背景を明確に伝えて、説得力を強めましょう。

生産ライン・工程改善など製造業特有の強調点

製造業は原材料の受け入れから完成まで、生産工程が明確なため、工程短縮や改善の提案がしやすい業界です。

省力化投資補助金を活用して、自動検査装置を導入すると検査時間を50%短縮され、出荷スピードの向上につながるなど、生産ラインでどのような変化が起きるのか、分かりやすい説明が可能です。

生産ライン・工程の現状と、設備やシステム導入後に考えられる変化を具体的に含めて、省力化につながる施策であると示しましょう。

【製造業向け】省力化投資補助金申請時の注意点

省力化投資補助金は、大きなメリットがある一方で、申請にあたって注意するべき部分がいくつかあります。

設備の選び方、その他補助金との混同、採択を目指すために知っておくべき点など、申請時の注意点をチェックしておきましょう。

設備投資額の大きさが採択リスクにならないよう工夫

製造業で使用する設備、システムは大型のものが多く、投資金額も大きくなりがちです。

このとき、工場や生産ラインの稼働状況にたいして、過剰に大きな設備、システムを選んでしまった場合、審査の際に省力化や企業が抱える課題に適していないと判断される恐れがあります。

現状の課題を解決できる、適正な規模の設備やシステムの選定。選んだ設備やシステムが、課題に対して妥当だと考えた理由。採択後の投資回収シミュレーション、資金繰り計画などを資料に盛り込んで、審査に備えましょう。

「ものづくり補助金」との混同・重複に注意

省力化投資補助金ものづくり補助金
目的中小企業等の付加価値額や生産性向上を図り、賃上げにつなげる生産性向上に資する革新的な新製品・新サービス開発や海外需要開拓
補助率1/2 (小規模事業者等は2/3)1/2 (小規模事業者等は2/3)
上限最大1億円(従業員数101人以上の場合)最大2,500万円(従業員数51人以上の場合)

さきほども触れたとおり、製造業をサポートする補助金制度には、省力化投資補助金だけでなく、ものづくり補助金もあります。

どちらも設備投資に使える補助金ですが、採択される目的や補助される上限金額に違いがあります。

「投資したい設備があり、どちらの目的にも該当する」という場合でも二重申請はできません。

申請の際はより目的に合った制度を選ぶと、採択の可能性が高まります。

同一の設備を別の補助金に申請するのはNGですが、設備が別であればそれぞれに申請可能です。

生産率アップにつながる生産ライン設備を省力化投資補助金として申請、新しい製品開発に必要な機械をものづくり補助金として申請、という形であれば、同時に申請できます。

環境配慮・安全基準といった審査でのチェックポイント

省力化投資補助金を採択する際、事務局が内容の審査を行い、一定の基準で事業者を選定します。

審査のポイントは4つあり、「補助対象事業としての適格性」「技術面」「計画面」「政策面」で採否が決まります。

※参照元:7-1 審査のポイント 応募申請の手引き(第3回公募) 中小企業省力化投資補助事業(一般型)

設備、システム投資の目的や、導入によって企業にもたらされる省力化の成果といった面だけでなく、政策面では「先端的なデジタル技術の活用」「低炭素技術の活用」「環境に配慮した事業の実施」といった部分も審査の対象です。

審査のポイントは、応募申請の手引きで確認できます。

応募申請の手引き(第3回公募)

内容を確認の上、「この設備を導入したらCO2の排出を○%低減できる」など、審査のポイントに添った事業計画書を作成しましょう。 

まとめ|製造業の強みを活かして採択につなげよう

製造業は省力化投資補助金(一般型)は、必須経費である機械装置・システム構築費との親和性が高い業界です。

高額な設備・システムを必要としているケースが多いことから、補助金制度の恩恵を受けやすい傾向にあります。

一方で、過剰投資だと判断されてしまったり、その他補助金と2重に申請してしまったりした場合、申請が採択されない可能性があります。

事業に適した規模の設備、システムの選定、目的に合致する補助金選びを心がけましょう。

自社が抱える省力化の課題はなにか、そのために何ができるのかをデータ(文字情情報や事例)や数値(測定結果や統計)で明確にしながら、申請のポイントをおさえた事業計画書、添付書類の作成を心がけてください。

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この記事を書いた人

補助金申請支援を専門とする会社にて勤務。
ものづくり補助金や事業再構築補助金において、交付申請・実績報告・事業化状況報告など、採択後の手続きを中心に多数の企業支援を担当。

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