製造業者が新事業進出補助金の申請支援・サポートを依頼する際のポイントと注意点
新事業進出補助金の申請を検討している製造業者の中には、「自社だけでの対応には不安がある」「確実に採択を目指したい」と考える方も多いのではないでしょうか。
確実な申請・採択のためには、製造業の特性を理解した支援会社の選定が重要です。
本記事では、製造業が新事業進出補助金の申請支援・サポートを依頼する際のポイントと注意点を解説します。
- 製造業が抱えやすい補助金申請時の課題
- 補助対象とされる設備・経費の見極め方
- 支援会社の選び方と失敗しない契約のコツ
- 採択率を高めるための準備と注意点
本記事を監修する専門家

多田 舞樹
東京大学 教養学部卒業。
PwC Advisory合同会社を経て、2018年に補助金コンサルティングや事業承継支援を手がける株式会社HighAdoptionを設立。これまでに500件を超える補助金の採択実績を持つ。
製造業者が新事業進出補助金を申請する際に直面しやすい課題
新事業進出補助金の申請は、製造業にとって複雑な要素が多く、特に補助対象となる設備やシステムの選定、数値目標の設定、財務指標の算出などで悩む企業が多いです。
公募要領の解釈次第で申請の成否が分かれるため、補助要件の理解と数値計画の作成には高度な判断力が求められます。
補助対象経費(機械装置・システム構築費など)の判断が難しい
製造業では多くの設備やシステムが導入対象になり得ますが、すべてが補助対象になるわけではありません。
公募要領では、①新事業進出の定義(製品等の新規性等)に該当し、②新事業売上高要件、③付加価値額要件(年平均4.0%成長見込み)を満たし、さらに④賃上げの目標(年平均2.5%)を設定する事業であることが求められます。
- ①新事業進出の定義(製品等の新規性等)
- ②新事業売上高要件
- ③付加価値額要件(年平均4.0%成長見込み)
- ④賃上げの目標(年平均2.5%)
そのため既存事業と共通する用途の設備や汎用的なツールは対象外となるケースもあります。
例えば、既存設備の“単なる置き換え”は対象外です。
新規性や事業化への寄与が客観的に示せるかを基準に判断しましょう。
一般的なオフィスソフトなどは認められない可能性が高いです。
新事業の売上・収益計画をロジカルに示すのが難しい
新事業進出補助金の申請では、これから行う新事業の売上・原価・販管費などの予測を、合理的な根拠に基づいて示す必要があります。
単に「成長が見込まれる市場だから売上も伸びる」といった感覚的な説明ではなく、ターゲット顧客数・販売単価・稼働率・コスト構成などの前提を明示し、収益性の裏付けを行うことが求められます。
また、過去に実施されていた事業再構築補助金と同様に、財務計画の整合性や説得力は審査上の重要ポイントです。
実現可能性を高めるためには、第三者の視点を交えながら、数字の根拠とストーリーの一貫性を持たせた事業計画書を作成することが推奨されます。
※参照元:公募要領 事業再構築補助金
製造業に強い新事業進出補助金の申請サポートを選ぶポイント
補助金の採択を目指すうえで、パートナー選びは成功の鍵を握ります。
製造業特有の業務フローや設備内容を理解している支援先でなければ、申請書に必要な具体性が欠ける恐れがあります。
特に、補助金の経験が豊富で、公募の採択傾向を把握している支援会社の存在が重要です。
製造業向けの採択実績が豊富な支援先を選ぶ
過去に製造業の補助金申請で多数の採択実績がある会社は、業界の特性や審査傾向を理解しています。
採択事例を保有している支援会社であれば、どのような文脈で申請内容を構成すべきか、どういった表現が採択されやすいかを熟知している可能性が高いです。
採択率の高さや、支援実績を公開している企業かどうかも確認ポイントになります。
製造業の強みと新事業分野をつなげて理解できる支援者か
製造業が新事業進出補助金を活用する場合、既存の製造技術やノウハウを活かしながら、異なる市場・事業領域に展開するケースも多く見られます。
そのため支援者には、「工場設備の知識」よりも、製造業の強みを正しく理解した上で、新分野にどう転用・展開できるかを一緒に整理できる力が求められます。
たとえば、製造技術を活かしたIoTサービス、環境関連製品、ヘルスケア事業など、進出先によって必要な視点は大きく変わります。
単なる補助金申請の代行ではなく、技術の強みと新事業の市場性を結びつけて提案できる支援者を選ぶことで、審査での説得力も高まります。
※まったく新しい事業(既存技術との関連がない新分野)に取り組む場合は、この限りではありません。
応募申請から実績報告まで一貫した支援が受けられるか
採択後の交付申請や実績報告は事務負担が大きく、途中で支援が終了するパートナーでは手間が増します。
補助金は補助事業完了後も、年度終了後を初回として5年間の「事業化状況報告」提出が必要なため、初回相談から事業完了報告まで一貫してサポートする体制の有無も重要です。
着手金・成果報酬のバランスだけでなく、支援範囲も必ず確認しましょう。
製造業者が新事業進出補助金の申請支援・サポートを依頼する際の注意点
支援会社選びで失敗しないためには、設備の対象範囲や資金計画、契約内容を事前に十分確認する必要があります。
特に製造業は投資額が大きくなりがちで、補助対象外の出費や契約トラブルが後の経営を圧迫するケースもあります。
補助対象外経費となりやすい機械・設備に注意
補助対象外の設備に予算を割くと、交付決定後に想定外の自己負担が発生する恐れがあります。
例えば、中古設備や既存施設の修繕に関する費用は補助対象外になりやすく、細かい仕様や取得条件まで確認することが重要です。
補助対象の明確な線引きは、公募要領や過去のQ&Aに基づいて判断する必要があります。
大規模投資による資金繰りリスクへの備え
補助金は実績報告・確定検査後に、「⑨補助金の請求→⑩補助金の支払」となる後払いです。
初期費用の資金繰りが追いつかないと、事業自体が頓挫する可能性があります。
特に製造業では数百万円~数千万円単位の設備投資が多いため、事前に金融機関との連携を図るリース・ローンの活用を検討するなどの備えが求められます。
リースは「共同申請」が可能です(リース料軽減計算書の提出等の条件あり)。
資金繰り対策として検討価値があります。
外部支援者(補助金コンサルタントなど)との契約内容に注意
支援会社との契約においては、報酬体系(着手金・成果報酬の割合)や成果範囲(どこまで支援するのか)を明確に定める必要があります。
書面での契約内容が不明確な場合、採択後に「そこは支援対象外」といったトラブルにつながりかねません。
特に成果報酬型であっても、失敗時の費用負担や途中解約条件には注意が必要です。
公募要領でも、提供内容とかい離した高額成功報酬や不透明な契約、虚偽記載の教唆等を問題視しています。
契約内容は書面で明確化しましょう。
まとめ|製造業が新事業進出補助金を成功させるために
製造業が新事業進出補助金を活用するには、業種特有の課題を理解し、適切な支援会社と連携することが鍵となります。
申請に必要な要件整理、数値化、契約判断の各フェーズにおいて、専門家の知見をうまく活かすことで採択率が高まります。
公募要領の読み解きだけでなく、実務に精通したパートナー選びが、成功への近道といえるでしょう。
