省力化投資補助金は専門家に頼むべき?自分で申請できるか、サポート・申請代行活用の判断ポイントを解説
本事業は、中小企業・小規模事業者自身の経営力を高め、事業計画期間にわたって売上拡大や生産性向上を後押しするために、人手不足に悩む中小企業等に対して、省力化投資を支援するものです。
このため、事業計画は必ず申請者自身で作成いただくとともに、事業の実行に責任を持って取り組んでいただく必要があります。
省力化投資補助金の申請にあたって、「自社だけで進めるか」「専門家に頼むべきか」と悩む企業は少なくありません。
特に一般型では、制度理解や書類作成に高度な知識が求められ、社内の体制によっては専門家の支援を検討すべきケースもあります。
実際に私も多くの企業の補助金申請を支援してきましたが、体感としては「自社で申請する企業が3割、支援会社を利用する企業が7割」程度です。
自社で申請を進めたものの、
- 申請完了まで辿り着かなかった
- 提出はできたが不採択となった
というケースも少なくありません。
本記事では、自社で申請をお考えの担当者様向けに、申請する際に押さえておきたいポイントと、申請サポート・申請代行の判断基準をわかりやすく解説します。
- 省力化投資補助金は制度理解と書類対応が最大の壁になる
- 自分で申請するなら社内リソースと経験があることが前提
- 申請サポートは一部依頼も可能だが不採択リスクに注意
- 申請代行はNG
自分で申請できる?素人でも対応可能?省力化投資補助金の申請難易度とは
自社での申請も可能ですが、特に一般型は一定の専門性が求められます。
実際、省力化投資補助金(一般型)の第1回公募では、申請件数1,809件のうち1,240件が採択され、採択率は約68.5%と比較的高い水準となりました。
しかし裏を返せば、約3割は不採択だったことになり、書類の完成度や制度理解の深さが採否を大きく左右します。
一般型は提出書類が多く、審査項目も複雑
カタログ型は書類が簡易化されており、制度内容も公開されていますが、それでも事業計画書には論理的な構成や定量的な裏付けが必要です。
売上や業務効率化の根拠を示す資料づくり、電子申請システムの操作にも注意が必要です。
一方で、一般型は提出書類が多く、審査項目も複雑なため、初めて申請する企業の多くが専門家の支援を受けています。
特に、10ページ前後の事業計画書や、省力化の効果を定量的に示すExcelシートの作成は、多くの担当者にとって大きなハードルとなります。
自社で申請を行う場合は、制度の要点を正確に理解し、審査基準を満たす水準の申請書を作成する必要があり、決して簡単とは言えません。
要件に沿わない内容や説明不足は不採択になるケースも
申請書は単なるフォーム入力ではなく、補助金の趣旨や技術性、計画の妥当性を示す論理構成が欠かせません。
要件に沿わない内容や説明不足があると、不採択となるケースもあるため、初心者にはサポートが必要な場面も少なくありません。
特に、初めての申請では構成や表現に苦戦することが多く、制度の意図を正しく汲み取って伝える力が問われます。
どちらを選ぶ?自社申請か専門家に依頼か
自社申請と専門家などに依頼(申請サポート)する場合では、それぞれメリット・デメリットがあります。
以下の判断軸を確認しましょう。
- 社内リソースと難易度|体制・経験・書類対応の現実
- 成功率とコストのバランスをどう考えるか
- 採択後の運用も含めた長期視点で考える
- 事業の重要性・スピード感から逆算する
①社内リソースと難易度|体制・経験・書類対応の現実
補助金申請では、社内に十分な人員と時間があるかが大きな判断材料になります。
申請書の作成や事業計画の構築には、経営戦略や数字に関する知識が求められ、初めての担当者にはハードルが高いのが実情です。
とくに、省力化投資補助金は「審査項目に沿った論理構成」や「費用対効果の定量的説明」が求められるため、単なる書類作成では済みません。
また、電子申請システムの操作に不慣れだと、提出自体が完了できないケースもあります。
こうした現実を踏まえ、自社だけで対応できる体制かどうかを冷静に判断することが大切です。
②成功率とコストのバランスをどう考えるか
申請支援を専門家に依頼する場合、当然ながら一定の費用がかかります。
しかし、採択されれば数百万円から最大1億円規模の補助金を受け取れる可能性があるため、「不採択による機会損失」は決して小さくありません。
申請の準備に手間がかかるとはいえ、この金額規模の支援を逃すことは、企業にとって大きな損失となり得ます。
費用が抑えられるからといって自社申請に踏み切った結果、書類不備や説得力不足で不採択になるケースも少なくありません。
「確実に通すための投資」としてコンサル費用をどう捉えるかが重要です。
③採択後の運用も含めた長期視点で考える
補助金は「採択されて終わり」ではありません。
交付申請、実績報告、設備の設置証明や支払い証明など、多くの手続きが採択後に控えています。
これらも含めて、補助金事業は半年〜1年以上にわたる長期プロジェクトです。
自社で対応できる工程とそうでない工程を見極め、必要に応じて継続的なサポートを依頼するのも一つの選択肢です。
「とりあえず申請だけ」ではなく、その後の対応まで視野に入れておくことで、リスクを最小限に抑え、スムーズに補助金を受け取ることができます。

④事業の重要性・スピード感から逆算する
申請の意思決定では、「この補助金が事業にとってどれだけ重要か」という視点も欠かせません。
たとえば、省力化設備の導入が競争力の強化に直結するなら、確実に通すためのリソースを投じる価値は大きいと言えます。
また、一般型の申請には、事前の計画策定や書類整備に3〜4ヶ月程度の準備期間が必要とされており、余裕をもって進めることが重要になります。
社内に余裕がない場合、申請期限から逆算して外部に頼る判断も有効です。
事業への影響度やスピード感から逆算し、「今、誰にどこまで任せるべきか」を冷静に見極めることが求められます。
専門家による申請サポート・申請代行は何をしてくれる?
省力化投資補助金に限らず、補助金申請においては申請者自身が主体となって取り組むことが制度上求められており、第三者に任せきりの申請は採択取消となる可能性もあります。
そのため、「申請代行」をうたうようなサービスが存在していても、制度の趣旨を踏まえ、利用は控えましょう。
(不適切な行為の例)
補助金申請代行を主たるサービスとして営業活動等を行う。
一方で、専門家による支援は「あくまで申請者が主体であること」を前提に、以下のような範囲で行われるのが一般的です。
- 事業内容と補助金の適合性の確認
- 事業計画書の構成・表現に関するアドバイス
- 書類の添削や加筆修正のサポート
- 採択後の交付申請や実績報告に関する支援
- 事業者が描いている事業計画の言語化のサポート
申請サポートでは、書類の作成はそのものは自社で行い、専門家は内容のブラッシュアップや制度解釈のアドバイスに徹するのが基本です。
加えて、やりたい事業の方向性はあるものの、まだ構想が抽象的であったり、どのように進めればよいか自分でも整理できていない事業者さまへの支援にも対応しています。
そのような場合には、ヒアリングなどを通じて事業の意図や背景を丁寧に引き出し、申請に必要な形へと整理・言語化のサポートも行います。
こうした支援をうまく活用することで、申請書の完成度を高め、採択率の向上や書類不備の防止につなげることが可能です。
どこまでを自社で対応し、どこからを外部に委ねるかは、自社のリソースやスケジュールに応じて柔軟に判断することが重要です。
必要な工程だけ依頼する「専門家への部分活用」もできるが、おすすめはしない
実際には、「事業計画書だけ添削してほしい」「申請システムの操作だけ手伝ってほしい」といった、特定の工程だけを切り出して支援を受けたいというニーズもあります。
こうした部分的な活用も形式上は可能ですが、基本的にはおすすめしていません。
というのも、委託された部分以外を申請者自身が不十分な理解のまま進めてしまうと、審査で評価されず不採択となるリスクが高まります。
また、全体像を把握しきれていないまま部分支援を受けることで、申請内容に齟齬が生まれ、トラブルの原因になるケースもあります。
- 自社で過去に申請経験がある
- 何度か自社で申請をして補助金を通す力を内製化したい
これらのケースを除くと、部分的なサポートでは厳しいという声が多くあります。
確かに、すべてを依頼すると費用はかかります。
ですが、その分、制度や審査の観点を理解した支援者から全体を通したサポートを受けられ、結果として採択率の向上や工数削減につながるのも事実です。
申請の成功確率を高めたい場合は、信頼できる支援者とともに、全体をしっかり伴走してもらう形をおすすめします。
自社申請は可能。ただし、難易度は高め
補助金の申請は、制度上あくまで自社が主体となって取り組む必要があります。
そのうえで、制度の複雑さや書類作成の負担を考えると、「一部だけ支援を受ける」ような部分的な活用では限界があるのが実情です。
確実に採択を目指すなら、制度に精通した専門家と一緒に、全体を見据えた支援を受けることがやはり一番安心です。
時間と労力をムダにしないためにも、準備段階からの伴走支援を検討してみてはいかがでしょうか。