実務支援者が解説!2025年ものづくり補助金「製造業」採択事例と結果から見る共通点
2025年も「ものづくり補助金」は、製造業における革新的な製品開発や生産プロセスの改善を後押しする制度として、多くの中小企業に活用されています。
採択を勝ち取るには、開発する製品・サービスの革新性、実現可能性など、審査基準を意識した計画づくりが不可欠です。
本記事では、2025年の第19~21次公募における製造業の採択事例を紹介しながら、実際に採択された事業の特徴を解説します。
これから「ものづくり補助金」の申請を検討されている製造業の方は、ぜひ本記事の事例を参考に、自社に合った申請戦略を考えるヒントにしてください。
- ものづくり補助金19〜21次公募(2025年)製造業の採択事例
- 採択された事業計画に共通する4つの特徴
本記事を監修する専門家

多田 舞樹
東京大学 教養学部卒業。
PwC Advisory合同会社を経て、2018年に補助金コンサルティングや事業承継支援を手がける株式会社HighAdoptionを設立。これまでに500件を超える補助金の採択実績を持つ。
【2025年】製造業のものづくり補助金の採択事例
採択実績の多い都道府県の中から、製造業において他の企業にも参考となるような採択事例のうち、とくに実現可能性が読み取りやすいものを選定し、ご紹介しております。
分野や規模が異なるため必ずしも“共通パターン”とは言い切れません。
しかし、内容を比較すると、採択に至った可能性を示すいくつかの特徴や傾向が読み取れます。
※本記事の事例は、申請件数が多い地域(例:東京都)の採択企業の中から、特定の業種・企業に偏らないように選定したものです。
あくまで一般的な傾向を把握するための“参考事例”としてご覧ください。
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事例①海外事業展開に向けた生産性・品質向上のための新製造ライン構築
| 事業者名 | 株式会社サイトパスファインダー |
| 所在地 | 東京都新宿区 |
| 会社HP | https://cytopathfinder.com/ja/company/ |
固相トランスフェクション技術を基盤に、細胞研究向けの試薬や細胞培養プレートなど研究用バイオツールの開発・製造を手がける企業。
ものづくり補助金を活用し、研究用製品の生産性向上と海外展開を見据えた新たな製造ライン構築に挑戦します。
事例②日本技術によるTCG鑑定の海外展開を支える高性能ケース製造
| 事業者名 | 株式会社Arsales |
| 所在地 | 東京都千代田区 |
| 会社HP | https://ars-grading.com/ |
トレーディングカードの鑑定・グレーディング事業を展開し、高性能スラブケースなどカード保護製品の開発も手がける企業。
ものづくり補助金を活用し、鑑定事業の海外展開を支える高性能ケースの製造体制構築に挑戦します。
事例③防犯性の高い小型化スマートキーシステムの試作品を開発
| 事業者名 | 株式会社セリュール |
| 所在地 | 東京都中央区 |
| 会社HP | http://company.serrure.co.jp/index.html |
工事不要で後付け可能な電子オートロック錠を自社企画・製造するメーカー企業。
ものづくり補助金を活用し、スマートキー連携型電子錠の量産体制構築および製品の海外展開に挑戦します。
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事例①テーブルスポット溶接機導入によるアルミ大物製品への新規参入
| 事業者名 | 株式会社エイム・トータス |
| 所在地 | 東京都八王子市 |
| 会社HP | https://aimtotasu.com/ |
精密板金・製缶・機械加工を一貫して手がける製造企業。
ものづくり補助金を活用し、テーブルスポット溶接機の導入によってアルミ大物製品分野への新規参入と生産性向上に挑戦します。
事例②高付加価値医療用シミュレーション製品向け複雑形状樹脂製品開発
| 事業者名 | 有限会社イワタ製作所 |
| 所在地 | 東京都大田区 |
| 会社HP | https://iwata-ss.com/ |
合成樹脂・プラスチック部品の切削・試作・加工を手がけ、多種少量生産に対応する製造企業。
ものづくり補助金を活用し、樹脂加工設備の刷新と量産体制強化による高付加価値部品の供給力向上に挑戦します。
事例③極限環境で使用される小型衛星用高付加価値部品への取組
| 事業者名 | 野方電機工業株式会社 |
| 所在地 | 東京都中野区 |
| 会社HP | https://www.nogatadenki.jp/ |
精密機械加工を専門とし、金属・超硬・樹脂・セラミックスなど幅広い素材に対応する町工場。
ものづくり補助金を活用し、1個からの部品製作体制を強化するための加工設備刷新と量産受注体制構築に挑戦します。
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発表後に更新予定
採択された製造業の事業計画に見られる共通点
今回取り上げた製造業の事例は6件と決して多くはありませんが、内容を比較すると、審査で評価された可能性のあるポイントがいくつか見えてきます。
海外展開を見据えた計画が多い
6件中3件が、海外市場を意識した取り組みでした。
市場規模が広がる分、収益性・将来性の説明がしやすいことがプラス材料になった可能性があります。
高付加価値・ニッチ分野での投資が目立つ
医療シミュレーション部品、小型衛星部品など、競合が限られる分野が複数見られました。
こうした分野は、自社の「自社の技術力等を活かした新製品・新サービス」を説明しやすい点が評価につながったと考えられます。
設備導入による“具体的な改善効果”が説明されている
生産性向上・歩留まり改善・量産体制構築など、設備導入で何がどのように良くなるのかが事例の中で明確に示されています。
「生産性向上」は明確な審査項目です。
ほかにも、これらはあくまで推測ではありますが、審査基準に照らすと、こうした点は「実現可能性」を支える材料としてプラスに評価されやすいと考えられます。
自社の強みを“設備導入で伸ばす”形になっている
どの事例も、顧客等に新たな価値を提供することを目的に、自社の技術力等を活かして新製品を開発するストーリーが描かれていました。
製造業の採択事例を参考に、自社でもものづくり補助金の申請を前向きに検討しよう
今回紹介した6つの事例は限られていますが、比較することで、 「こうした方向性の計画は評価されやすいのでは?」 というヒントがいくつか見えてきます。
- 海外など成長市場に向けた展開
- 高付加価値製品への挑戦
- 自社技術を設備導入で伸ばす
などは、審査基準との相性が良い傾向があります。
自社の強み、展開したい市場、改善したい工程を整理し、設備導入の必然性や事業の革新性をどう表現するかが、申請書の質を大きく左右します。
「自社の場合はどう整理したらいいのか」「革新性をどう書けばいいのか」など、 もし迷う部分があれば、早めに相談してもらうと申請全体が組み立てやすくなります。
少ない事例ではありますが、自社の計画づくりの参考にしてみてください。
